【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症流行下でも可能な限り適切な時期に子どもたちへの接種を 乳幼児の予防接種(麻しん(はしか)、風しん、水ぼうそう(水痘)など)
2020年9月3日更新
半年以上前に更新された記事です。

予防接種を受けよう!
予防接種を受けよう!
 ※2020年5月28日配信の記事を再編集しています。

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響により、日本のみならず世界中で乳幼児への予防接種率が下がってきていると言われています。特に、日本国内でも近年流行が見られた麻しん(はしか)や風しんは、予防接種率の低下の影響により今後多くの国々で流行する可能性があり、日本国内においても、はしかや風しんの定期接種率が低くなれば、全国的に流行してしまう可能性があります。新型コロナウイルス感染症の流行の影響によって、お子様の定期予防接種の実施がやむを得ず遅れてしまっている方々は、可能な限り適切な時期にお子様への定期予防接種を行っていただきますようお願いします。新型コロナウイルス感染症の対策は、たくさんの方々を守るためにとても大切であることは言うまでもありませんが、子供たちへの定期予防接種は、子供たちを守り、社会を守るために大変重要なものです。今後再び新型コロナウイルス感染症が流行した場合、子供たちへの定期予防接種の実施が困難となる場合があるかもしれませんが、それでもできる限り適切な時期に実施されるよう努力が必要です。


1歳児の予防接種

 1歳になると、0歳の時に受けたワクチンの追加接種として、インフルエンザ菌b型(ヒブ、Hib)、小児用肺炎球菌、四種混合ワクチンを接種します。また新たに、麻しん(はしか)と風しんのMRワクチン、水ぼうそうのワクチン、おたふくかぜのワクチンなどがあります。乳幼児期にかかると命にかかわる症状となる感染症も含まれており、予防接種は重要です。受け忘れがないよう、スケジュールを確認しましょう。また、日本脳炎ワクチンも定期接種として生後6か月から接種可能ですが、標準的な接種年齢は3歳以上とされています。

1歳の予防接種

0歳の予防接種(記事)

麻しん(はしか)と風しんのMRワクチン

 麻しんは「はしか」とも呼ばれ、パラミクソウイルス科に属する麻しんウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹性の感染症です。感染力は極めて強く、麻しんに対して免疫がない人が麻しんウイルスに感染すると、90%以上が発病し、不顕性感染は殆どないことも特徴の1つです。麻しんは麻しんウイルスが人から人へ感染していく感染症です。感染経路としては空気(飛沫核)感染の他に、飛沫感染、接触感染もあります。麻しんは空気感染によって拡がる代表的な感染症であり、その感染力は強く、1人の発症者から12~14人に感染させるといわれています。麻しん発症者が周囲の人に感染させることが可能な期間(感染可能期間)は、発熱等の症状が出現する1日前から発疹出現後4~5日目くらいまでです。麻しんウイルスの直径は100~250nmであり、飛沫核の状態で空中を浮遊し、それを吸い込むことで感染しますので、マスクを装着しても感染を防ぐことは困難です。麻しんの感染発症を防ぐ唯一の予防手段は、予めワクチンを接種して麻しんに対する免疫を獲得しておくことです。

 風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症です。症状は、症状が現れない不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで風しんと診断することは困難な疾患です。風しんに感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、出生児が先天性風しん症候群を発症する可能性があります。男女ともにワクチンを受けて、まず風しんの流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。

 麻しんと風しんの予防接種は、2006年度からMR(麻しん・風しん)混合ワクチンが定期接種に導入され、1歳と小学校入学前1年間の幼児(6歳になる年度)の2回接種となりました。また、2019年度から3年間、これまで風しんの定期接種を受ける機会がなかった昭和37年4月2日生まれから 昭和54年4月1日生まれの男性を対象に、風しんの抗体検査を前提に、定期接種を行うことになりました。この年代の男性には、過去に公的に予防接種が行われていないため、自分が風しんにかかり、家族や周囲の人たちに広げてしまうおそれがあります。対象者には、お住まいの自治体から、原則無料で風しんの抗体検査と予防接種を受けられるクーポン券が送付されます。

麻しん(はしか)

風しん・先天性風しん症候群とは

はしか(麻しん)と風しん(動画)

MRワクチンとは

水ぼうそう(水痘)のワクチン

 水痘(水ぼうそう)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に初めて感染(初感染)した時に発症する急性のウイルス感染症です。水痘は麻疹と並んで感染力が極めて強く、水痘に対する免疫がなければ感染後2週間程度の潜伏期間を経て発疹が出現します。日本では小児を中心に年間約100万人が水痘にり患していましたが、2014年10月から水痘ワクチンが定期接種となりました。

 水痘の感染力は極めて強く、空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染によってウイルスは上気道から侵入し、ウイルス血症を経て、通常は2週間前後(10~21日)の潜伏期間を経て発病すると言われています。水痘を発病している者と同じ空間を共有(同じ部屋、同じ飛行機の中等)した場合、その時間がどんなに短くても水痘に感染している可能性があります。水痘の感染発病を防ぐことのできる唯一の予防手段はワクチンの接種のみです。

 水痘ワクチンの標準的な接種スケジュールは、1回目は1歳以上1歳3か月未満で、2回目は1回目の接種後6か月以上12か月未満あけて接種します。

水ぼうそう(水痘)

水ぼうそう(水痘)(動画)

水痘ワクチン

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症です。通常1~2 週間で軽快します。最も多い合併症は髄膜炎です。その他、髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合があります。

 効果的に予防するには、ワクチンが唯一の方法です。有効性については、接種後のり患調査によると、接種者でのり患は1 ~3%程度であったとする報告があります。接種後の抗体価を測定した報告では、多少の違いがありますが、概ね90%前後が有効なレベルの抗体を獲得するとされています。

 おたふくかぜのワクチンは任意接種で、1歳になったら1回接種します。また、小学校入学前の1年間に2回目を接種することが望ましいとされています。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

おたふくかぜワクチン

インフルエンザ菌b型(ヒブ、Hib)

 インフルエンザ菌は、季節性のインフルエンザウイルスと同じ名前ですが、別物です。ヒトの鼻咽腔に常に存在しており、その多くは無莢膜株ですが、小児の髄膜炎や敗血症例から検出される株は、95%以上がHibです。

 インフルエンザ菌b型(ヒブ、Hib)ワクチンの標準的な接種スケジュールは、生後2か月になったら1回目、そこから27日以上あけて2回目、更にそこから27日以上あけて3回目、そして3回目から7か月以上開けて4回目を接種します。

インフルエンザ菌感染症(ヒブ感染症)

Hibワクチン

肺炎球菌感染症

 肺炎球菌感染症は、肺炎球菌による感染症です。

 肺炎球菌は、乳幼児の鼻咽頭に高い確率で定着する常在菌で、暇圧感染により伝播する小児の細菌感染症の主要な原因菌です。保菌者のすべてが発症するわけではなく、抵抗力の低下や、粘膜バリアの損傷等により、宿主と菌の間の均衡が崩れて菌が体内に侵入すると発症します。

 症状は、髄膜炎、敗血症・菌血症、肺炎、中耳炎等、多岐にわたりますが、本来無菌であるべき部位(血液、髄液等)から菌が検出される病態を侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)といいます。髄膜炎、敗血症・菌血症、血液培養養成の肺炎等が特に問題とされます。IPDは2歳未満の乳幼児で特にリスクが高く、ときに致命的であり、救命しても後遺症を残す可能性があるため、接種が可能になる2か月齢以上の乳児では積極的にワクチンによる予防を講じることが重要になります。

 肺炎球菌ワクチンの標準的な接種スケジュールは、生後2か月になったら1回目、そこから27日以上あけて2回目、更にそこから27日以上あけて3回目、そして1歳になったら4回目を接種します。

肺炎球菌感染症

肺炎球菌感染症(動画)

肺炎球菌ワクチン

ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳(四種混合ワクチン)

 ポリオはポリオウイルスが脊髄神経前角の運動神経核を侵すことで四肢を中心とする全身の筋肉の運動障害、いわゆる弛緩性麻痺(だらりとした麻痺)を起こす急性ウイルス感染症です。ジフテリアはジフテリア菌の感染によって生じる上気道粘膜疾患ですが、眼臉結膜・中耳・陰部・皮膚などがおかされることもあります。感染、増殖した菌から産生された毒素により昏睡や心筋炎などの全身症状が起こると死亡する危険が高くなりますが、致命率は平均5~10%とされています。破傷風は、破傷風菌による毒素のひとつである神経毒素(破傷風毒素)により強直性けいれんをひき起こす感染症です。百日咳は、特有のけいれん性の咳発作を特徴とする急性の呼吸器感染症です。母親からの免疫が期待できないため、乳児期早期から百日咳に感染する可能性があります。1歳以下の乳児、特に6か月以下では、死に至る危険性があるとされています。

 これらを予防するため、四種混合ワクチン(DPT-IPV)があります。四種混合ワクチンの標準的な接種スケジュールは、生後3か月になったら1回目を、その後3~8週間間隔で2回接種をします。3回目を終えたら、6か月以上(標準的には12~18か月あけて)、4回目の接種をします。

急性灰白髄炎(ポリオ、小児麻痺)とは

ジフテリア

破傷風

破傷風(動画)

百日咳

四種混合ワクチン

日本脳炎

 1期は、生後6か月以上7歳6か月未満ですが、標準的な接種年齢は、1期初回が3歳以上4歳未満、1期追加が4歳以上5歳未満とされています。

日本脳炎について

日本脳炎のワクチン

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏


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