【8月に注意してほしい感染症】【No.1】新型コロナウイルス感染症【No.2】RSウイルス感染症【No.3】腸管出血性大腸菌感染症 【No.4】カンピロバクター感染症
2021年7月28日更新
半年以上前に更新された記事です。

 8月に注意してほしい感染症 について、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【No.1】新型コロナウイルス感染症
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域以外にも、全国的に感染の拡大がみられ、流行の第5波に入っています。第5波の感染拡大の要因として考えられるのが、これまでのウイルスと置き換わりが進む「デルタ株」です。感染力が強いとされ、ワクチンの効果について、まだ分かっていない新たな変異株の動きには注視すべきです。

 緊急事態宣言下での東京オリンピックも開催中で、8月24日にはパラリンピックも開会式を迎えます。このような状況では、世界各国から持ち込まれた複数の「株」が入り交じる懸念もあります。

 現在の流行の中心は20~50代と、まだワクチンが行き渡っていない行動が活発な世代です。医療機関においても、60代以上の高齢者の入院は少ない印象で、少なくともワクチンの効果が現れていると考えてもよいのではないでしょうか。

 国も、「新型コロナワクチンは、感染を防止し収束に向かわせる切り札」として、希望者への接種スピードを加速させています。自分自身のみならず社会全体を守るため、多くの方がワクチンを接種することを望みます。また、ワクチンを接種した後も収束するまでは、引き続き感染予防対策を徹底して行いましょう。

【No.2】RSウイルス感染症
 乳幼児期に初感染すると重症化することもあるRSウイルスは、小さなお子さんにとっては新型コロナウイルスよりも警戒が必要なウイルスです。

 例年であれば、8月頃から患者報告数が増加し始め、冬期に流行のピークをみせます。しかし、今年は、年明けから福岡や大阪など西日本を中心に患者報告数の増加が始まり、本来なら流行期でない7月に観測史上最多の患者報告数を更新し続けるなど、季節外れの流行から抜け出せない状況です。

 現在、特に東京都や神奈川県・千葉県などの首都圏での感染拡大が懸念されており、東京都では統計開始以来最多の患者報告数を更新し続けています。人口の多い地域での感染拡大は、帰省などの人の移動でたちまち全国へのまん延する恐れがあります。また、一時期ピークアウトと思われた大阪府や広島県など西日本でも流行の再燃がみられることから、全国的に、感染動向に注視すべきです。

 小さいお子さんのいるご家庭をはじめ、保育所などで働く方は、必ずマスクの着用を忘れず、お子さんの手指衛生を徹底してください。RSウイルス感染症は、感染・発症してから悪化するまでのスピードがとても早い病気です。少しでも普段と違う様子や咳などの症状がみられたら、迷わずかかりつけ医を受診するようにしてください。

【No.3】腸管出血性大腸菌感染症
 細菌性の食中毒は主に夏季に流行します。腸管出血性大腸菌感染症もこの時期に流行する食中毒の代表例です。

 夏は、ご自宅や屋外でバーベキューをするなど、お肉を焼いて食べるという人も多いと思います。細菌性の食中毒の中でも、腸管出血性大腸菌は感染すると3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後、血便が出るケースもあります(出血性大腸炎)。また、発病者の中には、下痢など最初の症状が出てから5~13日後に、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を発症するといわれています。主に牛や羊などの家畜や他の動物が保菌しており、牛の生肉や生のレバー等を食べると感染してしまう可能性が高くなることから、厚生労働省は、牛レバーや豚肉・豚の内臓(レバーを含む)を生食用として販売・提供することを禁止しています。

 主な感染経路は飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取することや、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。

 腸管出血性大腸菌は中心部まで75℃で1分間以上加熱することで死滅するので、食事の際はしっかりと加熱することが基本です。また焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。

 国立感染症研究所によると、2021年第20週(5/17~5/23)頃から増加傾向がみられ、昨年の同時期よりも高い水準で推移しています。例年、8月中旬頃に流行のピークを迎えることから、感染対策を徹底してください。家庭だけでなく、飲食店のお肉も生焼けで食べるのは避け、じゅうぶん加熱するようにしましょう。

【No.4】カンピロバクター感染症
 腸管出血性大腸菌感染症と同様にカンピロバクター感染症も高温・多湿の時期に注意したい食中毒です。

 厚生労働省によると、2020年の病因物質別食中毒発生状況によると、細菌性食中毒の中で、カンピロバクター感染症が最も多く発生しています。

 カンピロバクター属菌は家畜や家禽(鳥類に属する家畜のこと。ニワトリ、ウズラ、七面鳥など)の腸管や生殖器に感染する微生物です。潜伏時間が1~7日間とやや長いことが特徴で、嘔吐・発熱・腹痛などの症状がみられます。また、はっきりとした因果関係は不明ですが、末梢神経の障害により四肢や顔、呼吸器官に麻痺などが起こる難病のギラン・バレー症候群を発症する一因とも言われています。

 カンピロバクターは中心部までじゅうぶんに加熱することで死滅します。加熱の目安は中心部を75℃以上で1分以上です。また焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。

 食中毒というと、飲食店での食事が原因と思われがちですが、毎日食べている家庭の食事でも発生しています。普段、当たり前にしていることが、思わぬ食中毒を引き起こすことがあります。飲食店や自宅でお肉を焼く際はじゅうぶんに感染対策を行って安全に食べましょう。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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