【腸管出血性大腸菌感染症】ふれあい動物園で感染することも?主な症状は激しい腹痛と下痢
2022年6月2日更新
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激しい腹痛と下痢に注意(びせいぶつ芸能社)
激しい腹痛と下痢に注意(びせいぶつ芸能社)
 動物とのふれあいは小児にとっては特に、情操教育において有意義とされています。動物に由来する感染症のリスクを減らし、思い出に残る楽しい体験にするために、餌やり体験の後や、動物に触った後はしっかり手を洗いましょう。

 厚生労働省の「腸管出血性大腸菌感染症Q&A」によると、これまでにふれあい動物イベント、搾乳体験等を原因とする感染事例が報告されているとしています。牛等の反芻(はんすう)動物では、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌を保菌していることがあります。また、反芻動物の糞便に汚染されたウサギ等の小動物の体表から二次的にヒトが感染した事例もあるようです。

腸管出血性大腸菌感染症とは

 5月に「感染症・予防接種ナビ」では、腸管出血性大腸菌感染症について取り上げました。主な感染経路は、菌に汚染された生肉や加熱が不十分な肉、菌が付着した飲食物からの経口感染、接触感染です。

 感染後3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後で血便となります(出血性大腸炎)。発熱は軽度です。血便は、初期段階では少量の血液の混入で始まりますが、次第に血液の量が増加し、典型例では血液そのもののような状態となります。

 発病者の6~9%では、下痢などの最初の症状が出てから5~13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。HUSを合併した場合の致死率は3~5%といわれています。

感染症の専門医は

 感染症専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する安井良則医師に、ふれあい動物園などを利用する際の注意点についてお話を伺いました。

 (安井医師)腸管出血性大腸菌は、ウシ、ヤギ、ヒツジなどのひづめが二つに分かれているもの(偶蹄目)の腸管にすんでいる菌です。感染力が強いので、接触感染する可能性もあります。ふれあい動物園などで、ヤギやヒツジに餌やりをした後は、必ず手を洗いましょう。

ふれあい動物園などでの注意点

 厚生労働省は、ふれあい動物施設等における衛生管理に関してのガイドラインを公表しています。ガイドラインによると多くの場合、動物に由来する感染症は、キスなどの過剰なふれあいを避け、しっかりと手洗いをすることで予防できるとしています。(以下、同ガイドラインより一部抜粋)

【来場者への啓発】
・動物エリアへの飲食物、おしゃぶり、ぬいぐるみ、おもちゃ等の持ち込みは禁止する。
・エリア内では喫煙、化粧直しをしないこと。また、小児に指しゃぶりをさせないよう注意する。
・糞便に触れないよう注意する。
・幼児には必ず監督者が伴うようにする。
・動物に触れる際は爪を短く切るよう事前に周知する。
・動物エリアからの退場時に手洗いをすること、並びに手洗い場へ誘導する標識を掲示する。
・施設内に飲食物販売店がある場合には、手洗い後に飲食することを啓発する。

【手洗いの方法】
・よく泡立てて、最低20秒間両手をこすりつけながら洗う。
・爪の先、指間もよく洗うように注意する。洗浄後は流水で洗い流す。
・可能ならば、使い捨てペーパータオルで水分を拭い取り、そのペーパータオルで蛇口を閉める。
・幼児の手洗いは監督者が手助けする必要がある。

引用:厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」
「動物展示施設における人と動物の共通感染症対策ガイドライン2003(追補版)ふれあい動物施設等における衛生管理に関するガイドライン」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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