【感染症ニュース】近畿地方を中心にRSウイルス感染症の流行が拡大中 赤ちゃんの『ヒューヒュー・ゼイゼイ』を見逃さないで!
2023年4月6日更新
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RSウイルス感染症は、呼吸器の感染症!
RSウイルス感染症は、呼吸器の感染症!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年12週(3/20〜26)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は0.42。前週よりも0.03ポイント増加しました。都道府県別では、北海道の1.81をはじめ、富山、長崎、鹿児島で1を超えています。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「私の勤務する大阪の定点あたりの報告数は、この1週間で約1.5倍に増加しています。地域別では、大阪市北部や西部で2を超えており、本格的な流行に近づいていると言えます。また、兵庫でも前週比1.5倍、京都では前週比1.38倍となっており、近畿地方で報告数の増加が顕著です。RSウイルス感染症は、急激に流行が拡大することは少ないですが、この流行が中国地方や、いずれ関東にも広がっていくのではないかと予測しています」と語っています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は、RS(Respiratory syncytial)ウイルスによる呼吸器の感染症です。RSウイルスは地理的あるいは気候的な偏りはなく、世界中に存在しています。日本ではかつては冬(11〜1月)に流行のピークがありましたが、近年は夏(7〜8月)に患者数が多くなっています。一昨年(2021年)も7月をピークとする大きな流行がありました。症状としては軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。

 安井医師は、「新型コロナウイルス感染症が流行して以来、その他の感染症の流行時期が以前とは変化しているように感じます。RSウイルス感染症もかつては冬、近年は夏場に患者数を増やしましたが、今年はそれよりも早い時期に報告数が増加しています。RSウイルス感染症は乳幼児、特に新生児にとってはインパクトの大きな感染症ですので、流行の拡大は気になるところです」としています。

新生児がかかると、突然死につながることも!

 新生児は普通、母親から移行抗体をもらうため、感染症にかかりにくいとされていますが、RSウイルスは抗体があるにもかかわらず、感染防御ができずに感染してしまいます。生後6か月以内で最も重症化するとされていて、この時期に感染すると、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。また、生後1か月未満の赤ちゃんがRSウイルスに感染した場合は、症状がわかりにくく診断が困難で、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

赤ちゃんのゼイゼイ・ヒューヒューを見逃さないで

 また、乳幼児がRSウイルス感染症にかかると、急激に症状が悪化することがあります。

 安井医師は、「乳幼児では、例えば午前中にちょっと元気がないなどの軽い症状だったのに、夕方には呼吸困難になるなど、急激に症状が変化することがあります。ですので、RSウイルス感染症と診断された場合には、その経過を注意深く見守る必要があります。また、正しく診断されることも重要ですので、赤ちゃんに少しでも『ヒューヒュー・ゼイゼイ』といった喘鳴(ぜんめい)の症状があれば、医療機関を受診していただければと思います」と語っています。

予防が難しいRSウイルス感染症

 RSウイルスには、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもが少なくとも1度は感染するとされています。そして、生涯で何度も繰り返し感染するので、大人になると免疫がついて、症状が軽いか、あるいは感染しても無症状というケースもあります。しかし、RSウイルスは咳やくしゃみだけではなく、会話の際に飛び散る飛沫や、ウイルスが付いている手指で触ったドアノブやテーブル、おもちゃなどからも感染するので、知らないうちに赤ちゃんにRSウイルスをうつしてしまうということがあるかもしれません。

 RSウイルス感染症の予防には、マスクの着用、流水・石鹸による手洗いかアルコール製剤による手指の衛生が有効です。また、おもちゃ・手すりなど、子どもたちが手を触れそうなもの・場所は、こまめにアルコールや塩素系の消毒剤で消毒しましょう。そして、保護者やきょうだいなど身近な人に少しでも咳や鼻水の症状があれば、赤ちゃんに近づかないよう心がけましょう。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年12週(3/20〜26)
大阪府感染症情報センター:ブロック別RSウイルス感染症流行状況2023年12週(3/20〜26)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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