【感染症ニュース】今年10例目の麻しん患者が発生 免疫無ければ、ほぼ100%感染 子どもの定期接種を忘れずに!
2023年6月12日更新
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免疫がない集団では1人の発症者から12~14人が感染!
免疫がない集団では1人の発症者から12~14人が感染!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年21週(5/22〜28)によると、この週、兵庫県で麻しんの感染者が1人報告されました。今年に入り、全国で麻しん患者の報告数は計10名。内訳は東京5名、兵庫2名、茨城、神奈川、大阪で各1名となっています。

麻しんとは?

 かつては「はしか」と呼ばれていた感染症=麻しん。麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症として知られています。麻しんウイルスの感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへと感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。

 症状としては、感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。2〜3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発しんが現れます。肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1000人に一人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も1000に一人と言われ、決して軽く見てはいけない感染症です。

感染力の強い麻しんは、ワクチンで予防!

 麻しんは免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症します。また、免疫のない集団に一人の発症者がいると、12〜14人が感染するとされています。

 麻しんの予防にはワクチンが有効です。ワクチンの定期接種は1歳の時と、小学校入学前の1年間の2回接種を受けます。1回の接種で95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができ、2回の接種で1回目に免疫がつかなかった多くに人に免疫をつけることができます。ワクチンはMR(麻しん風しん混合)ワクチンが一般的になっています。

 2009年以降は、年間数百人の患者発生に留まっており、2015年3月27日に世界保健機関西太平洋地域事務局より、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。これは国内での流行がなくなったことを意味し、患者発生は海外からの輸入例と、海外での感染事例のみが認められる状況ということです。

今年は、麻しん患者が増加傾向に

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年以来、日本での麻しん患者の発生はさらに減少し、一昨年、去年はともに年間で6名でした。しかし、今年はすでに10名の患者が発生しています。

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「現在、国内での麻しんの流行はありませんが、世界ではアジアやアフリカなどで多くの患者が報告されています。そうした地域から日本に来られた方が持ち込む、あるいは日本の方がそうした地域で感染して帰国してくるという形で、感染が広がるということが考えられます。新型コロナが落ち着き、海外から来られる観光客が増えていますし、海外旅行に行かれる方も増えています。麻しんは、これからも注意が必要です」と語っています。

麻しんワクチンの接種率が下がっている

 安井医師は、「かつては子どものうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得するのが普通でしたので、年配の方の多くは免疫を持っていると考えられます。しかしワクチンを接種していない方では感染しやすく、重症化の恐れもあります。近年、ワクチンの接種率が低下しており、2018年度には98.5%だったものが、2021年度には93.5%にまで低下しています。いつどこで感染するかわからないと考え、ワクチンで免疫をつけておくことが重要だと思います」と語っています。

定期接種の期間を逃してしまったら・・・

 麻しんワクチン(MRワクチン)は決められた期間であれば公費で無料で受けることができます。その期間が過ぎてしまった場合でも自費になりますが接種することはできるので、かかりつけ医などにご相談ください。また、自治体によっては定期接種の機会を逃した方への接種費用の助成を行なっているので、お住まいの市区町村などにお問い合わせください。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年21週(5/22〜28)
厚生労働省:麻しんについて、麻しん風しん予防接種の実施状況
兵庫県感染症情報センター:兵庫県感染症発生動向調査週報(速報)2023年21週(5/22〜28)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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