【感染症ニュース】梅毒の治療で大切なのは… 2023年第33週までの累計患者数9,482人 心当たりのある方はまずは検査を
2023年8月30日更新
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夏場の急増に注意
夏場の急増に注意
 国立感染症研究所の2023年第33週(8/14-20)速報データによると、梅毒の患者報告数は、全国で168人。今年に入ってからの累積報告数は、9,482人となりました。梅毒とは、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという細菌で、その病名は、症状の一つである赤い発しんがヤマモモ(楊梅)に似ていることに由来しています。検査で感染が判明した場合、治療に入ることになります。

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 その際の注意点を、感染症の専門医に伺いました。

梅毒とは?

 梅毒とは、主に性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接すること)などによってうつる病気です。梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症で、梅毒の病変部位と直接接すること、具体的には、性器と性器、性器と肛門、性器と口の接触などでうつります。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。また、妊娠している人が梅毒にかかると、流産や死産となったり、赤ちゃんが梅毒にかかった状態で生まれる先天梅毒になることがあります。決して軽く考えてはいけない感染症です。

梅毒の治療法は?

 一般的に梅毒に治療にはペニシリンが用いられます。また、アレルギーなどでペニシリンが使えない場合にも別の抗菌薬があります。薬によって回数は異なりますが、1日数回の内服薬を4週間続けます。その後、血液検査を行い抗体が規定量以下に下がるまで、投薬が続けられます。さらに、経過を確認するために、1年間はフォローを続けることが勧められています。また、2021年には世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤(筋肉内注射薬)の国内販売製造が承認されました。いずれにせよ、症状がなくなったあとも継続して治療・検査を受け、体内から菌をなくすことが重要です。ファイザー社によると、注射薬は、神経梅毒を除き、早期梅毒であれば、1度の注射で効果があるとしています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「梅毒患者数の増加を憂慮しています。今後の患者数の推移が気がかりですが、急に感染者数が減ることは、考えられません。梅毒は感染対策も重要ですが、感染判明後に適切な治療を行うことも重要です。梅毒は、ペニシリン系の抗菌薬が有効です。しかし、症状がおさまっていたとしても完治までにはおよそ1ヶ月、病状の進行状況によっては、更に長期間、薬を飲み続けないといけません。ただ、途中で治療を怠ってしまう方もいると聞いています。そうして、知らぬ間に感染がひろがっているという状況があるのかもしれません」と語っています。

これから治療を始める方へ(日本性感染症学会より)

 日本性感染症学会では、梅毒の患者さんに対し、次のような説明文を公開しています。気になる方はぜひ参考にしてください。
・梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌(以下、「梅毒菌」と呼びます)による感染症です。オーラルセックスを含む性交渉で感染します。
・「感染しているに無症状だったり、症状が軽くて病気であることを自覚していない人」から感染します。
・感染時期から1か月後ぐらいに、梅毒菌が入った場所(唇や陰部など)に「キズのようなもの」ができることがあります。
・感染時期から3か月ぐらいたったころに全身に発しんが出るなど、いろんな症状が出ることがあります。
・全く症状がなく、たまたま受けた血液検査で梅毒の陽性反応が出て感染がわかることもあります。
・感染早期に抗生物質を正しく使えば治りやすい病気です。
・治療にはペニシリンを使います。治療の初めに発熱することがありますが、1〜2日間でおさまります。ペニシリンにアレルギーがある人には別の抗生物質を使います。担当医の指示どおり、服薬を続けてください。
・あなたがうつしたかもしれない人(接触者)に梅毒の検査を勧めましょう。保健所・健康福祉事務所などに聞けば、無料で検査できるところを教えてくれます。

梅毒は、過去の感染症では無い

 梅毒は長年、世界中で悩まされていた感染症でした。しかし、ペニシリンの普及により、第二次世界大戦後に梅毒の発生は激減しました。日本では1960年代後半に年間1万例を超える大規模な流行が見られたあと、2000年代には年間数百例までに減少していました。しかし、2010年代に再び増加傾向に入り、昨年はついに半世紀ぶりに1万例を超えました。感染者の年齢は、男性は20〜50代、女性は20代に多く、直近6か月以内の性風俗産業の利用歴・従事歴については、男性の約4割に利用歴、女性の約4割に従事歴があったと報告されています。


引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年33週(8月14日〜20日) 、「梅毒とは」
厚生労働省HP:梅毒Q&A
日本性感染症学会:梅毒診療ガイド「これから梅毒の治療を始める方へ」
ファイザー株式会社 持続性ペニシリン製剤「ステルイズ®水性懸濁筋注シリンジ」プレスリリース 2022年1月26日
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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