【感染症ニュース】43歳発熱39.6℃・喉の激痛「唾も飲み込めず…」 溶連菌全国定点4.35微増も高水準維持
2024年2月8日更新
流行地域は注意
流行地域は注意
国立感染症研究所の2024年第4週(1/22-28)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は4.35。前週(3週)の4.28と比較し、ほぼ横ばいの微増となりました。全国的に患者は発生していますが、東京都(4.11)・埼玉県(5.73)・千葉県(5.85)など、首都圏で報告数が多くなっています。東京都では、前週比でやや下がりましたが、周辺ではやや増加していますので、引き続き、注意が必要です。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。今回、『感染症・予防接種ナビ』に寄せられたのは、愛知県の43歳の方からの経験談です。

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愛知県・43歳

1月4日 喉の痛みと関節痛、倦怠感で眠れず。喉が痛いときにはロキソニンを飲むことが多くこの日も飲んだが全く効果なし。(普段は市販の解熱鎮痛薬で緩和)喉の痛みと全身の倦怠感で眠れず。
1月5日 喉の激痛で唾を飲み込むこともできない。咳、くしゃみ、鼻水、頭痛は全くない。
溶連菌には何度もかかったことがあるため、溶連菌を疑い始める。喉の奥、左右が白くなっている。寒気もひどいがこの時点ではまだ熱はなし。同日午後に医療機関(内科)受診。この時点で熱は39.6。ただし、寒気、関節痛、倦怠感は続く。抗生剤等を処方してもらい、帰宅。寒気、関節痛、倦怠感、喉の激痛がとにかくひどく、横になっていないといられないほど。帰宅後すぐに薬を飲むと、ようやく寒気も治まり大量の発汗。その後解熱し、平熱にもどる。ただし、市販の解熱鎮痛薬を飲んでも喉の激痛は未だに緩和されず、水分もほとんどとれない。唾も飲み込めないままの現状。

感染症に詳しい医師は…

大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「溶連菌感染症は、様々な合併症を併発する可能性があるので、早期治療が重要です。発熱やノドの痛みなど、初期症状がある場合は、早めに医療機関を受診していただければと思います。現在、溶連菌・新型コロナ・インフルエンザが三つ巴の流行状況となっています。早期に診断を受け、治療に当たることが肝要です。溶連菌感染症は抗菌薬で治りますが、治療が遅れると、それだけ症状が長引くおそれがあります。溶連菌は、薬に対する耐性菌も存在し、効果が薄い薬もあります。また、途中で服用を止めてしまうと、症状が、ぶり返す場合もあります。しっかり治療することが必要です。今回のケース、直接診断した訳ではないので、何とも言えませんが、溶連菌感染症は、自然治癒するケースもありますが、喉の痛みが激しいため、医療機関で診察を受けられる方が多いです。市販の解熱鎮痛薬で対処するのではなく、処方された薬を、しっかりと飲み切りましょう。また、溶連菌感染症の患者数が増えると、必然的に劇症型に罹患する方も増えます。今週の溶連菌感染症の患者報告数の定点は、横ばいですが、過去最高水準が維持されていることが怖いと言えます。3月の春休み期間に入るまで、警戒が必要と考えています」としています。

溶連菌感染症の症状は?

主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎にかかると、合併症を引き起こす懸念があります。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患。あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることが知られています。

治療法は?

治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第4週(1/22-28)群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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