【感染症ニュース】溶連菌感染症第5週全国定点報告数4.63 4週連続増加 医師「大きな流行で推移。医療関係者も…」
2024年2月14日更新
苺舌や猩紅熱(しょうこうねつ)になることも!
苺舌や猩紅熱(しょうこうねつ)になることも!
国立感染症研究所の令和6年第5週(1/29-2/4)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は4.63。今年に入り4週連続で増加しています。全国的に患者が発生していますが、山形10.79、鳥取10.53、福岡9.07、北海道8.87、富山7.24、茨城7.03、沖縄6.55、新潟6.20が多くなっています。

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。

溶連菌感染症の症状は?

主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。

潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、
「2023年の秋頃から、その時期としては例年にないほどの患者が報告されている溶連菌感染症ですが、その傾向は現在も続いています。大きな流行規模で推移しており、我々、医療関係者とその周辺でも、増えている実感があります。溶連菌の症状の特徴は、ひどい咽頭痛なので、喉に違和感を感じたら、早めに医療機関を受診してください。溶連菌感染症自体もつらい症状がありますが、治療が不十分な場合は、リウマチ熱や腎炎などの合併症を起こす可能性がありますので、しっかりと治療を行う必要があります。また溶連菌感染症の感染者が増えると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の感染者も増えるので、警戒が必要です」としています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは、溶連菌感染症と同じA群溶血性レンサ球菌が原因の菌の感染症です。別名「人食いバクテリア」とも呼ばれることがあり、発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的です。発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされ、患者のうち約30%が亡くなっているという報告もあります。また近年、妊産婦の症例も報告されています。日本では毎年100〜200人の患者が確認されているとされていましたが、去年は941人、今年もすでに239人の患者が報告されています。

予防と治療

溶連菌感染症はワクチンが開発されていません。予防としては、患者との濃厚接触を避けることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も行うことが大切です。治療については抗菌薬を服用します。ペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応になり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も10日間は確実に投与し、菌をなくすことが重要です。一方、保育園などの登園の目安は「抗菌薬の内服後24〜48時間が経過していること」となっています。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第5週(1/29-2/4)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
子ども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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