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2019年の9月に注意してほしい感染症についてはこちらから

 9月に注意してほしい感染症

【No1】RSウイルス感染症…昨年と同様、8月にRSウイルス感染症の本格的流行が始まりました。9月には、さらに患者報告数の増加が危惧されます。特に乳幼児の育児に関わる方は、注意が必要です。

【No2】腸管出血性大腸菌感染症…例年、8月~9月にかけて患者発生数のピークとなっています。9月も、患者発生数の多い状態が予想されます。焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと必ず使い分けましょう。

【要注意】風しん、先天風しん症候群…国立感染症研究所によると、風しんの患者報告数は、8月19日(第33週)までに184人となり2015~2017年の同時期における報告数を超え、さらに2016及び2017年の年間累積報告数を超えました。8月28日、国立感染症研究所 感染症疫学センターは、「首都圏における風疹急増に関する緊急情報:2018年8月22日現在」を公開し、風しん及び先天性風しん症候群に対する注意を呼びかけています。妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、胎児にも風しんウイルスが感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風しん症候群の児が生まれる可能性があります。妊婦やその家族は特に注意が必要です。

【要注意】梅毒…2010年~2017年までの7年間で患者報告数が9倍に増加しています。2017年は、2000年以降最多の患者報告数となりました。2018年は、8/19(第33週)までに4,221人(暫定値)となっており、このままでは、昨年の患者数5,770人を大幅に上回る可能性があります。特に注意しなければならないのは若年層です。特に20代の女性の患者数の急増がみられており、このままでは、先天梅毒(※)の増加が危惧されます。※先天梅毒:妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります。

 感染症ごとに、更に詳しくみていきましょう。

RSウイルス感染症

 昨年と同様、8月にRSウイルス感染症の本格的流行が始まりました。9月には、さらに患者報告数の増加が危惧されます。特に乳幼児の育児に関わる方は、注意が必要です。

 RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスが伝播することによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなったり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。

 生後6か月未満の乳児で特に注意してほしい症状として、粘っこい鼻水による鼻づまりの症状が非常に強くなることがあります。3か月未満の乳児は、口呼吸ができていません。鼻で呼吸をしているために、粘っこい鼻水が詰まっただけでも苦しくなります。そして更に、ミルクやおっぱいを飲む時に口もふさがってしまうと呼吸がしにくい状態となります。保護者の方は、乳児がおっぱいの飲みが悪くなったなどの変化を注意深く観察しましょう。

 RSウイルス感染症の予防法は、手洗い、咳エチケットなどが有効ですが、乳幼児自身が予防することは難しいです。そのため、咳などの症状がある年長児や大人には、0歳児、1歳児のお世話は薦められません。しかしながら、お世話をしなければならないときは、手洗いやマスクの装着などで乳幼児に感染させないように気をつけましょう。

RSウイルス感染症

腸管出血性大腸菌感染症

 例年、8月~9月にかけて患者発生数のピークとなっています。9月も、患者発生数の多い状態が予想されます。焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと必ず使い分けましょう。

 腸管出血性大腸菌感染症は、感染後3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後で血便となります(出血性大腸炎)。発熱は軽度です。血便は、初期段階では、少量の血液の混入で始まりますが、次第に血液の量が増加し、典型例では血液そのもののような状態となります。発病者の6~9%では、下痢などの最初の症状が出てから5~13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。HUSを合併した場合の致死率は3~5%といわれています。

<感染経路と対策1>主な感染経路は、腸管出血性大腸菌によって汚染された食材や水分を経口摂取することによる経口感染です。例年、腸管出血性大腸菌の感染者の報告数は、0~4歳児が最多です。5~9歳がこれに次いで多い状況です。感染後の発症率も9歳以下は80%前後と高くなっています。牛の生肉や生レバーなどの内臓は、腸管出血性大腸菌の感染の可能性があるので食べるべきではありませんが、特に保育所に通っている年齢群の乳幼児では厳禁です。高齢者や乳幼児と日常的に接触する職業や立場の人(家庭も含めて)、あるいは免疫力の低下した人と接触する職業・立場の人は厳に慎むべきです。

<感染経路と対策2>腸管出血性大腸菌は75℃で1分間加熱で死滅するので、乳幼児への食事はしっかりと加熱したものを供することが基本です。また焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと必ず使い分けましょう。過去の事例として野菜類(生野菜はもとより浅漬けなど)やそれ以外の加工食品(最近ではお団子の食中毒)での集団発生がありました。

腸管出血性大腸菌感染症

風しん、先天性風しん症候群

 国立感染症研究所によると、風しんの患者報告数は、8月19日(第33週)までに184人となり2015~2017年の同時期における報告数を超え、さらに2016及び2017年の年間累積報告数を超えました。8月28日、国立感染症研究所 感染症疫学センターは、「首都圏における風しん急増に関する緊急情報:2018年8月22日現在」を公開し、風しん及び先天性風しん症候群に対する注意を呼びかけています。妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、胎児にも風しんウイルスが感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風しん症候群の児が生まれる可能性があります。妊婦やその家族は特に注意が必要です。

 過去には2012年に2,386人、2013年に14,344人の患者が報告され、この流行に関連した先天性風しん症候群が45人確認されています。

 妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、胎児にも風しんウイルスが感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風しん症候群の児が生まれる可能性があります。妊娠中は風しん含有ワクチンの接種は受けられず、受けた後は2か月間妊娠を避ける必要があることから、女性は妊娠前に2回の風しん含有ワクチンを受けておくこと及び妊婦の周囲の者に対するワクチン接種を行うことが重要です。また、30~50代の男性で風しんに罹ったことがなく、風しん含有ワクチンを受けていないか、あるいは接種歴が不明の場合は、早めにMRワクチンを受けておくことが奨められます。風しんはワクチンで予防可能な感染症です。

 先天性風しん症候群の発生を防ぐためには妊婦への感染を防止することが重要であり、妊娠出産年齢の女性及び妊婦の周囲の者のうち感受性者を減少させる必要があります。また、風しんの感染拡大を防止するためには、30~50代の男性に蓄積した感受性者を減少させる必要があります。

風しん

梅毒

 2010年~2017年までの7年間で患者報告数が9倍に増加しています。2017年は、2000年以降最多の患者報告数となりました。2018年は、8/19(第33週)までに4,221人(暫定値)となっており、このままでは、昨年の患者数5,770人を大幅に上回る可能性があります。特に注意しなければならないのは若年層です。特に20代の女性の患者数の急増がみられており、このままでは、先天梅毒(※)の増加が危惧されます。※先天梅毒:妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります。

 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。

 早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。

梅毒

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏