出典:国立感染症研究所感染症疫学センター 感染症発生動向調査週報 2015年第15週通巻第17巻第15号掲載資料 出典:国立感染症研究所感染症疫学センター 感染症発生動向調査週報 2015年第15週通巻第17巻第15号掲載資料
 伝染性紅斑(りんご病) の定点当たり報告数は減少したものの、過去3年の同時期と比べ最も多い状況です。妊婦が感染すると胎児水腫や流産の可能性があります。伝染性紅班は、特徴的な症状だけでなく、多彩な症状があることからも、実際に診断されているのは感染者の中の一部である可能性があります。加えて紅斑や発疹が出現して臨床的に診断が容易になる前に周囲への感染性があることからも、その感染対策は極めて困難です。保育園、幼稚園、小学校等の小児の集団生活施設で流行が発生している際には、その流行が収束するまでの間、妊婦等が施設内に立ち入ることや近づくことは、可能な限り避けた方が良いと思われます。

地域別情報

 伝染性紅斑(りんご病)が本格的な流行となっている都道府県は、福島県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、石川県、滋賀県、福岡県、大分県 

 ※感染症アラート 2015年4月13日〜2015年4月19日 過去5年間の全国47都道府県の定点あたり報告数(厚生労働省・国立感染症研究所IDWR週報)の値の95%に相当するパーセンタイル点を超える値を本格的な流行としています。

概要

 伝染性紅斑(りんご病) は4~5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。

特徴的な症状

 感染後10〜20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。

成人の場合

 両頬の蝶形紅斑は少ないですが、合併症である関節痛・関節炎の頻度は、成人男性では約30%、成人女性では約60%と高率です。(小児では約10%以下)

特に妊婦の場合

 妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。

感染経路

 通常は飛沫感染もしくは接触感染ですが、まれにウイルス血症の時期に採取された血液製剤からの感染の報告があります。本症は紅斑出現の時期には殆ど感染力はありませんが、反対にウイルス排泄時期には特徴的な症状が現れないため診断に至らず、効果的な二次感染の予防策はありません。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2015/4/30