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流行株に変化が 流行株に変化が
 厚生労働省によると、4月25日に発表された1日の新型コロナウイルスの新規陽性者数は、1万2475人。1週間平均では9816人で、前週の8349人から1400人以上増加しました。新規陽性者数は第8波がピークとなった1月上旬以降減少を続けてきましたが、3月下旬からゆるやかに増加が続いています。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「新型コロナ新規陽性者数は、過去の第6〜8波は急激に増加しましたが、今回は思ったよりもゆるやかに増加しています。現在までの国内の累積患者数は約26%ですので、この数字を見る限りではこれからも新型コロナの流行は続くと考えられます。しかしこれからどのように増えていくのか、そしてピークはいつなのかなど、予測は非常に難しい状況になっています」と語っています。

流行のカギは、流行株の置き換わり?

 去年8月にピークを迎えた第7波、今年1月にピークを迎えた第8波では、BA.5という変異株が感染の多くを占めました。しかし、第121回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料によると、第16週(4/17〜23)ではXBB1.5が54%を占めると推定しています。XBB1.5はオミクロン株のBA.2から変異したもので、北米で増加しています。

 XBB1.5の特徴としては、免疫逃避が起こる可能性があり、感染・伝播性がより高くなっている可能性があると指摘されています。しかし、重症度はBQ.1系統などと比較しても同程度とされています。

 安井医師は、「流行株が置き換わることにより、流行の仕方がどのように変化するのかというのは、なかなか予測が難しいところです。しかし、置き換わりが感染者の増加に影響を与えるということは十分に考えられることです。これからゴールデンウィークで人の移動が多くなることを考えても、これからの流行拡大には注意が必要だと思います」としています。

ワクチン「令和4年秋開始接種」は5月7日で終了

 新型コロナウイルス感染症の予防の一つに、ワクチン接種があります。新型コロナワクチンには、重症化や、発熱やせきなどの症状が出ることを防ぐ効果があります。

 現在「令和4年秋開始接種」が実施されており、次の方が接種対象になります。

・5歳以上の方
・追加接種(3回目または4回目)の実施の有無に関わらず、日本国内で初回接種(1回目・2回目)が完了している方
・前回の接種から下記の一定期間が経過した方
→ファイザー社及びモデルナ社のオミクロン株対応2価ワクチン:3か月以上
→武田社(ノババックス)の従来ワクチン(1価):6か月以上

 接種は原則としてお住まいの市区町村の医療機関や接種会場において無料で受けられます。令和4年秋開始接種は5月7日に終了し、5月8日からは高齢者や基礎疾患を有する方などを対象とする「令和5年春開始接種」が始まります。それ以外の方の接種は令和5年9〜12月に実施予定の「令和5年秋開始接種」まで間隔が開くため、注意が必要です。

 安井医師は、「私が勤務する病院にも、新型コロナウイルスの感染者が多く入院されていましたが、ワクチンを接種された方よりも、接種されていない方のほうが、重症化するケースが多いと感じています。特に高齢者や重症化リスクの高い方は、ワクチンの接種をおすすめします」としています。

心配な副反応は?

 ワクチンを接種すると、体内で新型コロナウイルスに対する免疫ができる過程で、様々な症状(注射した部分の痛み、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢など)が現れることがあります。こうした症状の大部分は、接種の翌日をピークに発言することが多いですが、数日以内に回復します。

 発熱や痛みに対しては、医師が処方する薬以外にも、市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン等))で対応することができます。また発熱時には、水分を十分に摂ることが重要です。症状が特に重かったり、長引くことがあれば、医療機関等への受診や相談をしてください。

 ゴールデンウィークはもうすぐ。楽しく過ごすためにも手洗いなど、引き続き新型コロナの感染予防をお忘れなく!

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(※報告日別新規陽性者数/2023年4月25日版)、第121回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード配布資料(2023年4月19日)、(追加接種)令和4年秋開始接種についてのお知らせ、(追加接種)令和5年春開始接種についてのお知らせ、新型コロナワクチンの副反応について
国立感染症研究所:感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株について(第27報)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏