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風邪気味のときは、乳幼児との接触を避ける! 風邪気味のときは、乳幼児との接触を避ける!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年21週(5/22〜28)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたり報告数は1.95。前週と比較すると約1.25倍、前々週と比較すると約1.9倍に増加しています。都道府県別では、和歌山5.9を筆頭に、山口5.51、奈良4.00、そして滋賀、大阪、兵庫、広島、佐賀、宮崎、鹿児島で3を超えています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「RSウイルス感染症は、引き続き西日本を中心に流行が拡大傾向にあります。また、東海・関東の多くの都県で報告数が増え始めており、このまま行くと全国に拡大し、2021年以来の大きな流行になるのではないかと危惧しています。RSウイルス感染症は1歳未満、特に6か月未満の乳児や早産児などが感染すると重症化する可能性があるので、乳幼児がいるご家庭などでは注意をしていただきたいです」と語っています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする、乳幼児に多く認められる急性呼吸器感染症です。生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の人が感染するとされています。初感染の場合、発熱や鼻汁、咳などの上気道症状が出現し、うち約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現するとされています。重篤な合併症としては無呼吸発作、急性脳症などがあり、生後1か月未満の子どもが感染した場合、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。主な感染経路は、患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスの付着した手指や物品等を介した接触感染です。

大人はもっと感染している?

 感染症発生動向調査のRSウイルス感染症のデータは、全国の約3000か所の小児科定点医療機関から毎週報告されている患者数から作成されています。これらの定点から、1週間にRSウイルス感染症と診断された患者数が報告され、その平均値が定点当たり報告数として毎週発表されています。ちなみに大流行した2021年のピーク時(第28週/7月)の定点当たり報告数は5.99でした。

 安井医師は、「RSウイルス感染症の定点当たり報告数は小児科からのデータだけなので、実際に大人など社会でどのくらいの人が感染しているのか、その実態を知ることはできません。RSウイルスは生涯に何度も感染しますが、初感染の時には症状が重く、その後何度も感染するに従い症状が軽くなります。成人では風邪、あるいは無症状で気が付かないこともあるので、多くの方が感染しているのかもしれません。そういう方が、重症化リスクの高い乳幼児、あるいは高齢者にうつすことが考えられるので、特に流行している地域の方は、ご自身がRSウイルスに感染している可能性を考慮して、乳幼児や高齢者に接するようにしていただきたいと思います」と語っています。

RSウイルス感染症の治療法、予防は?

 RSウイルス感染症には特効薬はありません。治療は基本的には症状を和らげる対症療法となります。予防については、RSウイルスに対するワクチンはありません。発症の中心は0歳児と1歳児なので、咳などの呼吸器症状がある大人やきょうだいなど年長の子どもは、可能な限り0歳児と1歳児との接触を避けることが、乳幼児の発症予防に繋がります。またどうしても接する必要がある場合は、飛沫感染対策としてマスクをして接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤などで消毒し、流水・石鹸による手洗いまたはアルコール製剤による手指衛生を行ってください。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年21週(5/22〜28)、2021年28週(7/12〜18)、感染症発生動向調査から見る2018年〜2021年の我が国のRSウイルス感染症の状況
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏