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症状が落ち着いても引き続き注意 症状が落ち着いても引き続き注意
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年22週(5/29-6/4)によると、ヘルパンギーナの患者の定点あたり報告数は1.87。前週と比較すると、40%ほど増加しています。都道府県別では、宮崎の8.78など高い水準となっています。また大分県では、翌週の23週(6/5-6/11)に、「6.06」と警報発令基準値6を超えたため、2023年6月14日に、流行警報を発令しています。

 ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎です。乳幼児を中心に夏季に流行する、いわゆる夏かぜの代表的疾患です。国立感染症研究所によると、患者の年齢は5歳以下 が全体の90%以上を占め、1歳代がもっとも多く、ついで2、3、4歳代の順で、0歳と5歳はほぼ同程度の症例が報告されています。

警報が発令された大分県は…

 大分県感染症対策課は「大分県での、ヘルパンギーナの警報発令は6年ぶりです。小さいお子さんが多くかかる病気ですので、幼稚園・保育所・学校などで、感染をひろげないよう、流水石鹸による手洗いやうがいを呼び掛けています。また、気をつけて頂きたいのは、いったん症状が治まったようにみえても、ウイルスの体外への排出は一定期間続いていますので、保育所などで便を処理する時は、使い捨て手袋、マスク、エプロンを着用するようにしてください。大分県内では、ヘルパンギーナだけでなく、RSウイルス感染症やインフルエンザなど、様々な感染症の報告もあがっています。換気も忘れないようお願いします」と注意を呼び掛けています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「ヘルパンギーナが急増しています。今後、7月に向けて、手足口病と共に増えていく事が予測されます。ヘルパンギーナは、保育園など小さなお子さんの間でうつし合うことで広がります。口の中が痛くて、ご飯が食べられない子にはかわいそうですが、いつかは通る道です。一方で、まれではありますが、ウイルスによる髄膜炎が起こる場合があり注意が必要です。お子さんに、頭痛や嘔吐などの症状があった場合は、医療機関を受診してください」としています。

症状

 2~4 日の潜伏期を経過し、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現し、咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1~2mm 、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈(こううん、皮膚が部分的に充血して赤く見えること)で囲まれた小水疱が出現します。小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴います。発熱については2 ~4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失します。発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、それによる脱水症などを呈することがありますが、ほとんどは予後良好です。エンテロウイルス感染は、多彩な病状を示す疾患で、ヘルパンギーナの場合にもまれに無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあります。前者の場合には発熱以外に頭痛、嘔吐などに注意すべきですが、項部硬直は見られないことも多いです。後者に関しては、心不全徴候の出現に十分注意することが必要です。鑑別診断として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎(口腔病変は歯齦・舌に顕著)、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔内前方に水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎(発熱を伴わず、口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられます。

治療・予防

 国立感染症研究所によると、「特異的な治療法はなく通常は対症療法のみであり、発熱や頭痛などに対してはアセトアミノフェンなどを用いることもある。時には脱水に対する治療が必要なこともある。無菌性髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要であるが、後者の場合には特に循環器専門医による治療が望まれる。特異的な予防法はないが、感染者との密接な接触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒を励行することなどである」としています。


参照
国立感染症研究所 「ヘルパンギーナとは」

取材
大分県感染症対策課
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏