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秋には新ワクチンが登場 秋には新ワクチンが登場
 厚生労働省が8月4日に発表した令和5年第30週(7/24〜30)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、全国の定点当たり報告数は15.91。前週から約14パーセント増加しています。一方、北海道、福井、岐阜、滋賀、沖縄では減少に転じています。夏休みも中盤になった現在、新型コロナの実際の流行はどうなっているのでしょうか。

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感染症に詳しい医師は・・・

 感染症の専門医で、新型コロナウイルス感染症の診療にあたる大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「第30週のデータを見ると依然として増えてはいるものの、爆発的に増えているという感じではなく、ピークに近づきつつある、あるいは現在はピークを過ぎつつあるのではないかと予測しています。第31週のデータはこれからですが、減少する都道府県が増えていくのではないかと予測しています」と話しています。

新型コロナによる重症患者が増えている?

 安井医師は、勤務している病院の状況について、「今も入院患者は増えていますが、どんどん増えているという感じではありません。一方、重症患者が増えており、高齢者の方、あるいは基礎疾患がある方が新型コロナウイルスの感染に起因する肺炎や心筋炎など入院する方が見られます。心筋炎は心臓の筋肉に炎症が起こり、心不全の原因にもなる病気ですので、命に関わることもあります。特に、ワクチン接種をされていない方が重症化している印象があります」としています。実際、第30週では、新規入院患者数は全国で1万人を超えています。ICUに入院中の患者数、ECMOまたは人工呼吸器で管理中の患者数も増加しています。

重症患者が増えるのは、ピークアウトの兆し?

 一方、安井医師は、これまでの経験からこのように話しています。

 「これまでの新型コロナの流行状況を振り返ると、まず若い人たちの間で流行が始まり、いろいろな世代へ感染が広がっていきました。あまり外に出ることのない高齢者や基礎疾患がある方にまで感染が広がり重症化しているということは、社会全体に新型コロナが蔓延しているということを示していると思います。ただ、社会全体に流行が広がればそれ以上に感染する人は増えていかないので、重症患者の増加はピークアウトに向かっている兆候なのではないかと予測しています。これまでピークアウトはお盆過ぎの8月中旬頃と予測していましたが、もう少し早まるかもしれません」

新規患者数が減少しても、油断できない

 とはいえ、ピークアウトに向かっているとしても、感染対策は引き続き必要です。

 安井医師は、「高齢者や基礎疾患のある方が新型コロナに感染すると、重症化し、命にかかわることもあります。これからお盆が始まり、帰省などで人流も増え、おじいさんやおばあさんなど高齢者に会う機会も増えます。若い方では感染していても症状が軽い、あるいは無症状の方もいるので、重症化リスクが高い方たちにうつさないように行動することが重要です。また、重症化を防ぐためにもワクチンの接種は重要だと思います」としています。

令和5年春開始接種は9月19日まで

 現在、65歳以上の高齢者、5〜64歳で基礎疾患を有する方などに行われている「令和5年春開始接種」9月19日までとなりました。そして、9月20日からはより多くの方を対象とする「令和5年秋開始接種」が始まり、現在流行している主流株に向けて開発されたワクチン(オミクロン株XBB1.5対応1価のワクチン)が接種される予定です。

 これについて安井医師は、「新型コロナの現在の流行は、これからピークアウトしていきますので、慌ててワクチンを接種する必要はありませんが、冬には再び流行するおそれがありますので、11月ごろまでに接種するといいと思います。mRNAワクチについては、これからもうち続けるのかという議論はありますが、重症化の防止に大きな役割を果たしていると思います。特に重症化リスクの高い方は、引き続きワクチン接種をするといいと思います」と語っています。

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について令和5年第30週(7/24〜30)、新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)、今後の新型コロナワクチン接種について(その6)(事務連絡・令和5年8月4日)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏