半年以上前に更新された記事です。

多くの型があり、何度も感染! 多くの型があり、何度も感染!
 国立感染症研究所の第32週(8/7-13)の速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は0.56。前週の0.64から約13%減少しました。一見、減少しているようにも見えますが、第32週は、お盆や暦の関係で、医療機関がお休みに入っているケースもあり、今後も、患者数の動向に注視が必要です。翌週の33週(8/14-20)は、お盆休みの時期が含まれていますが、大阪府では、前週比で増加しています。

【2023年】8月に注意してほしい感染症! 専門医がコロナ「大きく増加」と予測 要注意は梅毒・腸管出血性大腸菌感染症など多数

 今回、「感染症・予防接種ナビ」に寄せられたのは、東京都・3歳の経験談です。

咽頭結膜熱・経験談 東京・3歳

 今年の7月から幼稚園の満3歳児クラスに通い始めました。特に病気することもなく通えていましたが一学期最終日にアデノウイルスに感染発症しました。

7/21(金)
 毎朝検温して園に報告する為検温したところ平熱より少し高いかなという印象でしたが他に何も症状がなく一学期最終日で私も予定があった為登園させました(バス通園)。帰りのバスの乗車前に熱を測ったところ39℃あるということで園からお迎え要請。お迎えに行った際園で少量嘔吐。園の近くにかかりつけの小児科がある為そのまま受診する為ベビーカーに乗せて待機。お腹空いたと言うのでお菓子など食べさせていたら今度は初回より多めに嘔吐。発熱嘔吐以外の所見が見られない為後日また受診するよう言われ解熱剤のみ処方。帰宅後は比較的元気だが食欲無し。解熱剤飲ませそのまま就寝。

7月22日(土)
 高熱が続く為午後に再診。
 午前中に来院した同じ園の子数人がアデノウイルスだったので可能性が高いということで検査し陽性反応。高熱が5日間くらい続くこと、特効薬など無く解熱剤使っても追いつかないのであまり使いすぎなくても良いかもとのこと、解熱剤処方され帰宅。この頃から一日中眠気を訴えてすぐ寝てしまうことが続き、寝つきが悪いと泣いて起きての連続で心配になりました。

 ※7月22日~7月25日までは状態はほとんど変わらず、熱は38℃台~39℃台ウロウロ。39℃超えて機嫌悪そうな時は解熱剤使いましたが日中はあまり効果が見られず、夜間に使うと一時的に37℃台まで下がりましたが朝にはまた高熱に戻っていました。小児科受診は7/21、7/22、7/25、7/26

 7月26日に7/22~ずっと寝ていることが気になり血液検査をお願いしました。結果は異常なし。あともう少しだから水分補給だけ頑張ってということで帰宅してこれを書いています。すぐに寝てしまいますが状態は良くなっているようで水分と食事も前よりは摂れています。イヤイヤ期と酷い偏食の状態のまま今回かかってしまった為水分取らせるのだけで一苦労でした。ジュース、ゼリーを好まず、新しいものは警戒して拒否。バニラアイスを食べてくれたので多用していたら飽きられる。チョコレート系のお菓子、スナック菓子なら少量は食べてくれました。飲み物は後半からはお茶しか受け付けず。完治したらとりあえず偏食の改善と体調不良時でも飲めそうな飲み物を探しておこうと思います。解熱剤も吐き出してしまう為今日やっと坐薬に変えてもらいました(失念していました)。まだ完治してないですがここ数年かかった感染症の中では非常に厄介だったなと感じました。また非常にうつりやすいと聞いていたので旦那と上の子は完全隔離で過ごし今のところ大丈夫そうです(私は分からないです)。覇気のない様子が続き入院も覚悟していましたが意外と大丈夫でした。感染された場合は長期戦を覚悟した方が良いと思います。嘔吐は初日の2回のみ、うちの子は結膜炎などの症状はなく発熱のみで後半から鼻水が酷くなって来ました。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「アデノウイルスによる感染症は、症状が比較的重いケースが見受けられます。アデノウイルスが引き起こす症状は、割りと高い熱が続いたり、のどの痛みが3-4日続き、治るまで日数を要します。お子さんの頃に、一度は罹る感染症ですが、アデノウイルスは、なかなかしぶとく、アルコール消毒も、効き目が薄いため、幼稚園・保育園で広がりやすいので注意が必要です。今回のケースは、検査が陽性だったとのことで、アデノウイルスによる感染症であったことは間違いないようですが、本来、咽頭結膜熱は、結膜炎・のどの痛み・発熱を併発した場合に診断が出ます。例年であれば、これから流行が収まる時期に入ります。しかし、今年は、感受性者が蓄積している状況です。大阪府では、一度、減り始めたように見えて、第33週(8/14-20)に増加に転じています。幼稚園・保育園など、身の回りで流行している場合は、改めて注意してください」としています。

咽頭結膜熱とは?

 咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。例年7〜8月に感染のピークがあり、子どもの感染者が多く、プールでの接触やタオルの共用などにより感染することがあるので、「プール熱」としても知られている感染症です。症状としては、38~39度の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。

アデノウイルスが起こす感染症

 咽頭結膜熱以外にも、アデノウイルスが原因の感染症は次のものがあります。

・呼吸器感染症
 主に3、7型によるもので、7型は重症の肺炎を引き起こすことがあります。乳幼児がかかることが多く、髄膜炎、脳炎、心筋炎などを併発することもあります。発熱や咳が長引き、呼吸障害など重症になることもあります。

・流行性角結膜炎
 8、19、37型および53、54、56型などによるもので、目が充血し、目やにが出ます。結膜炎経過後に点状表層角膜炎を作ることが多く、幼小児では偽膜性結膜炎になることもあります。

・出血性膀胱炎
 主に11型によるもので、排尿時痛があり、真っ赤な血尿が出ます。排尿時の痛みと肉眼的血尿が特徴で、これらの膀胱炎症状は2~3日で良くなります。

・胃腸炎
 主に31、40、41型によるもので、乳幼児期に多く、腹痛、嘔吐、下痢などを伴います。

アデノウイルス感染症の治療・予防

 咽頭結膜熱などアデノウイルスが原因の感染症を総称して「アデノウイルス感染症」と呼ぶこともあります。アデノウイルス感染症には抗ウイルス薬はありません。ほとんどは自然に治りますが、高熱が比較的長く(5日前後)続くことがあり、吐き気や頭痛が強い、咳が激しい時は早めに医療機関に相談してください。予防について、ワクチンはなく、接触感染・飛沫感染対策として流水や石けんによる手洗いなど手指衛生が重要です。夏場はプールなどで感染することも多く、プールから上がった時はシャワーを浴び、うがいをする。またタオルなどは共用せず、別々に使うことが感染防止につながります。


引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第31週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏