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 2023年9月に注意してほしい感染症について、感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【2023年】9月に注意してほしい感染症! 専門医が予測 コロナは減少傾向に入るか見極め必要 季節外れの流行の感染症も… 要注意は梅毒・腸管出血性大腸菌感染症

【No.1】新型コロナウイルス感染症
 新型コロナウイルス感染症も患者報告数は、第32週(8/7-13)報告をみると、全国的に減っています。一方で、増加若しくは横ばいの地域もあるので、流行状況を把握しながら、適切な感染対策をとってください。一方、大阪府では、医療機関がお盆お休みに入っている、第33週(8/14-20)に再度、上昇に転じています。減少傾向に入ったと断じるには、まだ早いでしょう。今後、感染者数がどのように推移するか、引き続き注意が必要です。2023年5月から、5類に移行しましたが、気がかりなのは、「EG.5」系統が増加傾向にあることです。国立感染症研究所の新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報第30週(7/24-7/30)のゲノムサーベイランスによると、「EG.5.1 系統(の検出)が最も多く、民間検査機関のデータでも、EG.5.1 系統が 23.6%と最も多かった」としています。9月は、過去の流行データから、感染者数は減少することが予測されます。しかし、8月末時点で、勤務先の病院に入院する患者さんは、毎日、いらっしゃいます。中には、肺炎を発症し、人工呼吸が必要なケースもあります。症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。合併症の恐れがある方は、特に注意が必要です。一方、ワクチンを接種した後も、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。

【No.2】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。

【No.3】咽頭結膜熱
 咽頭結膜熱は、例年6月から7月にかけて流行がピークを迎える感染症です。しかし、8月に入ってからも大阪・兵庫・福岡では、ある程度の患者報告があります。季節外れの流行の可能性もあるので、注意が必要でしょう。症状は風邪とよく似ていますが、発熱、咽頭痛、結膜炎です。発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。学校が夏休み期間に入り流行は落ち着くと考えられますが、注意を要します。

【No.4】インフルエンザ
 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられています。日本でのインフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え3月頃まで続きます。しかし、2023年は患者報告数が、減り切らず、くすぶり続けています。例年の同時期に比べると高い水準であり、流行の動向がつかみにくいため、注意が必要です。


 主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染で、他に接触感染もあるといわれています。飛沫感染対策として、咳エチケット。接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト-ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。学校が夏休み期間に入るため、減少していくと考えられますが、流行地域は注意が必要です。

【要注意①】梅毒
 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。

 2023年第27週(7/3-7/9)は、前年の同時期と比べ、2000例弱増えています。このまま増加が続けば、15,000例ほどになることが予測されます。性別関係なく、患者報告数が増えており、特に女性では、梅毒に感染したと気づかないまま妊娠して、先天梅毒の赤ちゃんが生まれる可能性があるので注意が必要です。妊娠中でも治療は可能です。ほとんどの産婦人科では、妊婦健診の際に血液検査してもらえます。妊娠したら必ず梅毒の検査を受けましょう。早期の投薬治療などで完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また患者本人が完治しても、パートナーも治療を行うなど、適切な予防策を取らなければ、感染を繰り返すことがあるため、注意が必要です。

【要注意②】腸管出血性大腸菌感染症
 腸管出血性大腸菌は、ウシ、ヤギ、ヒツジなどのひづめが二つに分かれているもの(偶蹄目)の腸管にすんでいる菌です。感染力が強いので、接触感染する可能性もあります。感染すると3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後、血便が出るケースもあります(出血性大腸炎)。また、発病者の6~9%では、下痢などの最初の症状が出てから5~13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。主な感染経路は飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取することや、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。腸管出血性大腸菌は、中心部まで75℃で1分間以上加熱することで死滅するので、食事の際はしっかりと加熱することが基本です。肉の生食や、生焼けで食べることは避けましょう。またバーベキューや焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。また、意外なところでは、ふれあい動物園などで、ヤギやヒツジから感染するケースもあります。動物と触れ合ったり、餌やりをした後は、必ず手を洗うようにしましょう。


感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「新型コロナウイルス感染症は、いったん減少していくと予測していますが、私の勤務先では、減っているようには見えず、毎日、入院患者さんがいらっしゃいます。中には、重度の肺炎を発症し、人工呼吸器が必要と思われるケースもありますので、高齢者や基礎疾患をお持ちの方は、注意が必要です。また、大阪府はお盆期間の第33週(8/14-20)に再度、患者報告数が上昇に転じています。減少局面に入ったと断じるのではなく、見極めが必要です。また、気がかりなのは、梅毒の患者数の増加です。今年に入ってから第32週(8/7-13)までの累積報告数は、9,213人と1万人目前です。梅毒は、適切な治療で治る病気です。心当たりのある方は、まずは検査を受けて頂きたいです」としています。


取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏