早めの受診と早期治療を! 早めの受診と早期治療を!
国立感染症研究所の第42週(10/16-22)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は2.67。前週(41週)と比較すると約1.4倍の増加となりました。全国的に患者は発生していますが、鳥取、宮崎、埼玉、福岡などで報告数が多くなっています。

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。

溶連菌感染症は、学童期の子どもの感染が多い

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎はいずれの年齢でも発症する可能性がありますが、学童期の子どもが最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状を呈することは少ないとされています。通常は、感染した人との接触でうつりやすく、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに感染の可能性も増加します。家庭(きょうだい間など)、そして学校などでの集団感染が多いとされています。予防としては患者との濃厚接触を避けることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も有効です。

溶連菌感染症の症状は?

主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎にかかると、合併症を引き起こす懸念があります。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患。あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることが知られています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「今回のデータは10月の中旬から下旬ですが、様々な感染症の報告数が増加傾向にあり、溶連菌感染症もそのひとつです。溶連菌感染症の患者報告数が、気味の悪い動きをしていることが気がかりです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3年ににわたり大きな流行がなかったことが、その他の感染症の感染拡大につながっているのではないかと考えられます。溶連菌感染症は様々な合併症を併発する可能性があるので、早期治療が重要です。発熱やノドの痛みなど、初期に起こる症状がある場合は、早めに医療機関を受診していただければと思います。溶連菌感染症は抗菌薬で治りますが、治療が遅れると、それだけ症状が長引くおそれがあります。症状の改善、そして合併症の予防という点においても、早期治療が重要です」としています。

治療法は?

治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ第42週(10/16-22)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏