50歳を過ぎると帯状疱疹のリスクが高くなる 50歳を過ぎると帯状疱疹のリスクが高くなる
帯状疱疹は、水痘-帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。水痘とは、「水ぼうそう」のことで、感染したことがある人は、治癒した後も、体内の神経節にウイルスが潜伏した状態が続きます。潜伏したウイルスは、加齢やストレス、疲労等による免疫力の低下で再活発化し、帯状疱疹を引き起こします。また、帯状疱疹の合併症の一つとして帯状疱疹後神経痛があり、発症頻度は年齢や症例定義、報告によって異なりますが、帯状疱疹患者の10-50%で生じるとされています。国内外の疫学調査において、壮年層における帯状疱疹では発症から3ヶ月以上持続する疼痛が10-20%に認められます。帯状疱疹は、特に50歳を境に発症率が急上昇します。埼玉県の74歳の方から、突然の歯痛の原因が帯状疱疹によるものだったという経験談が寄せられました。

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帯状疱疹の体験談(埼玉県74歳)

10月30日 突然、左側の歯の辺り全体が痛み出しました。キリで刺すような激痛でした。歯科医でレントゲン検査をしましたが、歯の神経には異常はないとのことで、ロキソニンと抗生剤2日分をもらって帰りました。ロキソニンを服用しても、激痛はおさまりませんでした。翌日、刺すような痛みは止み脈拍に連動しているのかとも思える激痛が続きました。夜は一睡もできません。
10月31日 3日前から、左の髪の生え際の皮膚から体液のようなものが染み出し、それが、結晶化するという状態が続いていました。歯痛との関連性は知らず、皮膚科を受診しました。皮膚科の先生は、一目見て「帯状疱疹」ですね。「歯痛は、帯状疱疹性歯痛でしょう」と言いました。7日分のバラシクロビル錠、クラリス、ゲンダマイシンを処方してくれました。「7日たって効果がなければ、また考えましょう」とのことでした。同日、夕刻、帯状疱疹(水泡)左顔の相当広い範囲に発生しました。
11月3日、歯痛は左奥歯1本のみとなりましたが脈打つものではなく、常時継続する激痛です。夜眠れない日が続いています。体長は不調で、食欲はありません。1週間処方薬を服用した結果治癒するならばありがたいことです。

感染症に詳しい医師は…

眠れないほどの痛みがあるということ、その後痛みは解消したのでしょうか。また、顔に相当広い範囲の水疱が発生したとのこと。感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に聞きました。「直接診断した訳ではないので、症状の詳細な経過が分からない部分もあります。今回のケースの帯状疱疹性歯痛というのはあまり詳しくないのですが、記載にある帯状疱疹の水疱が顔の相当広い範囲に発生という症状は、とても気がかりです。帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそうの原因である『水痘帯状疱疹ウイルス』が長い間体の神経節に潜んでいて、高齢になるなど免疫力が弱まると再び活性化して起こる感染症です。体の片側に症状が出るのが特徴で、目のまわりに症状が出ると、失明するおそれもあります。顔の付近に発疹が出るような場合は、入院しながら、経過を見守らなければならないケースもあります。経験談の文章から察すると、かなりの重い症状であると思われます。引き続き治療を続けられ、一刻も早く回復されることを願っています。」

帯状疱疹の特徴

帯状疱疹は、かつて水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも発症の可能性があります。加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍、免疫抑制状態などをきっかけに、神経節に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化することによって発症します。水ぼうそうにかかったことがある人なら約10〜30%、85歳以上の方は約50%が帯状疱疹を経験しているという報告もあります。症状としては体の片側に、時に痛みを伴う水疱状の発疹が発生します。通常発症する部位に、発疹が出現する2〜3日前からかゆみや痛みが発生します。その後、3〜5日間にわたって発疹が現れ、かさぶたになるまでには10〜15日ほどかかります。また、発疹が治っても帯状疱疹後神経痛といって、発症した部位の痛みが長く続くことがあります。

帯状疱疹が増えている要因

また近年、帯状疱疹が増加しているという話をよく耳にします。それについて安井医師は、
「帯状疱疹が増えている原因の一つには、水ぼうそうの患者が激減したことがあると思います。現在水ぼうそうのワクチンは定期接種となっており、子どもたちが水ぼうそうを発症することは大変少なくなりました。ただしそのことにより、かつて水ぼうそうにかかったことがある人たちも水痘帯状疱疹ウイルスに接することが少なくなりました。それまではウイルスに接することで免疫が維持されていたのですが、ウイルスに接する機会が少なくなったとで、免疫が弱まっている可能性もあるのではないかと考えています」と語っています。

帯状疱疹の予防には、帯状疱疹ワクチンの接種を

帯状疱疹の予防には、帯状疱疹ワクチンが有効です。50歳以上になると帯状疱疹のリスクが高まるので、接種を検討してみてはいかがでしょうか。帯状疱疹ワクチンは2種類あります。また、接種費用の補助が出る自治体もあるので、詳しくはかかりつけ医などにご相談ください。

引用
国立感染症研究所:帯状疱疹ファクトシート(2017年2月10日)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏