大人も症状重くなることも 大人も症状重くなることも
国立感染症研究所の第44週(10/30-11/5)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は2.45。前週からは0.02ポイントの微増となりましたが、過去10年で最多を継続中です。咽頭結膜熱は、1週間で1定点あたりの患者報告数が3を超えると警報レベルとなりますが、北海道、富山、福井、三重、京都、大阪、奈良、福岡、佐賀、長崎、沖縄で3を超えています。

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咽頭結膜熱とは?

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39℃の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「咽頭結膜熱が、近年例を見ない大きな流行となっています。例年夏と冬に流行のピークがあるので、これから冬に向かって流行が続いていくことも考えられますが、過去の傾向が参考にならない動きを見せています。これからどのように推移していくのか、予測は大変難しくなっています。一方で、冬は、多くのウイルス・菌の流行に適した季節となります。じゅうぶんな注意が必要でしょう」と語っています。

大人も感染する咽頭結膜熱

咽頭結膜熱はプール熱という呼び方でも知られています。なお、プール熱という名前の方が一般的に知られるようになり、プールに入ったら感染してしまうなどというイメージを持っている方もいらっしゃいますが、残留塩素濃度の基準を満たしているプールの水を介して感染することはほとんどありません。夏場にプールに入った子どもたちがタオルを共用することで感染が広がることがあるのでこのように呼ばれていますが、実は大人も感染します。29歳の方から、このような体験談が寄せられました。

《体験談*29歳女性、兵庫県》

【11月7日】
朝:起床時、喉の腫れ 昼:寒気、市販薬+トローチ 夜:薬効果無し、体温38.8℃、食事無し
【11月8日】
朝:診察、インフルコロナ陰性、体温38.6℃、頓服(60kg相当量)抗生剤3日分(1週間効果)、食事無し 昼:寒気、怠さ、食欲不振、頭痛、喉の腫れ、痛み、食事無し 夜:体温38.8℃、飲むゼリー
【11月9日】
深夜:緊急外来受診、体温40℃超え、歩けない、意識朦朧、喋れない、脱水症状、処置:点滴による水分、解熱剤、アデノウイルス陽性、特効薬が無いと聞き絶望。 昼:体温37.5℃ 点滴効果?体のしんどさに変化無し

【11月10日】
朝:耳鼻科受診体温37.4℃、解熱剤が追いついてないと言われ下剤、痰切り、炎症止め処方
昼: 体温38.6℃
とりあえずしんど過ぎます。もう一生かかりたくない。薬が効かない、熱が下がらない、しかもかなりの高熱が長期間続く未だに体調戻っていません。喉の腫れもまだひいていません。
体験談はここまでです。その後、快方に向かわれたのでしょうか。とても気がかりです。

咽頭結膜熱は対症療法で

安井医師は「体温が40℃を超え、意識が朦朧とされたということ、とても辛かったのではないかと思います。体験談に書かれているように、咽頭結膜熱には抗ウイルス薬などの特効薬などはなく、解熱剤など対症療法で治療していくことになります。症状は3〜5日続くということですので、もう良くなられているとは思いますが、水分をとって、しっかり休んでいただきたいと思います。アデノウイルスには様々な型があり、この方の場合は、今までに感染したことの無い型に感染してしまった可能性があります。子どもに多い病気ですが、保護者の方が、子どもから感染するケースもあります。特に流行している地域では、感染に気をつけていただければと思います」と語っています。

引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第44週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏