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国立感染症研究所の第45週(11/6-12)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は3.34。前週(44週)と比較すると約1.1倍の増加となりました。全国的に患者が発生していますが、埼玉、千葉、東京、大阪、鳥取、山口、福岡、宮崎で定点当たり報告数が4を超えています。

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。

溶連菌感染症の症状は?

主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「例年、年末に向けてピークを迎える溶連菌感染症ですが、今年は今までになく早い時期から、流行が始まっています。報告数も例年のピークに近い数になっているのですが、これでピークアウトするのか、それともさらに大きな流行になるのかは予測が難しくなっています。他の感染症にも言えることですが、溶連菌感染症も新型コロナウイルスが流行していたこの3年間に患者数が激減していたので、多くの方がかかりやすくなっていると言えます。特にお子さんたちはこの3年間にさまざまな感染症の病原体に接することが少なかったので、免疫が十分でなく、溶連菌感染症をはじめ多くの感染症にかかりやすい状態にあると思います」としています。

予防法・治療法は?

溶連菌感染症の予防としては、患者との濃厚接触をさけることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も有効です。治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。安井医師は「溶連菌感染症は様々な合併症を併発する可能性があるので、早期治療が重要です。発熱やノドの痛みなど、初期に起こる症状がある場合は、早めに医療機関を受診していただければと思います。溶連菌感染症は抗菌薬で治りますが、治療が遅れると、それだけ症状が長引くおそれがあります。症状の改善、そして合併症の予防という点においても、早期治療が重要です」としています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

また、A群溶血性レンサ球菌は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の原因菌でもあります。別名「人食いバクテリア」とも呼ばれることがあり、日本では毎年100〜200人の患者が確認されており、このうちの約30%が亡くなっています。発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。また近年、妊産婦の症例も報告されています。今年はすでに731人の患者が報告されています。安井医師は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症はまれな感染症ではありますが、社会全体に溶連菌感染症が広まると、A群溶血性レンサ球菌に接する機会が増え、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者も増えると思います。このような感染症もあるということを知っておいていただければと思います」としています。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ第45週(11/6-12)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏