報告数が30を超えると警報レベル 報告数が30を超えると警報レベル
厚生労働省が12月1日に発表した「インフルエンザの発生状況について」令和5年第47週(11/20-26) によると、全国のインフルエンザ定点当たり報告数は28.30。前週(46週)から約30%増加しました。ほとんどの都道府県で増加が見られ、ほぼ半数が警報レベルとなる30を超えています。

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インフルエンザとは?

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる感染症です。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの症状が比較的急速に現れるのが特徴です。あわせて普通の風邪と同じように、ノドの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られます。子どもではまれに急性脳症を、高齢の方や免疫力の低下している方では、二次性の肺炎を伴うなど、重症になることがあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「インフルエンザの定点当たり報告数が全国で警報レベルを超えるのは、新型コロナウイルス感染症が流行する以前は、例年年明けの1月頃でしたが、今年は、12月中に全国で警報レベルに達する勢いで流行しています。翌週の大阪府の報告数は、減少していますが、全国的に気温が寒くなり、インフルエンザが流行しやすい環境になってきましたので、全国的には、これから更に患者数が増えると考えています。ただ、どのような流行になるのかというのはなかなか難しく、さらに急激に増加していくのか、あるいはゆるやかに増加を続けるのか、地域差もあり、予測が難しい状況になっています。身の回りの流行にじゅうぶん注意してください」としています。

感受性者の蓄積

また、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年春から2022年いっぱいまでの約3年間、全国でインフルエンザにかかる人は大変少なく(去年の第47週の全国のインフルエンザ定点当たり報告数は0.11)、日本全体がインフルエンザにかかりやすい状態となっていることも、患者報告数の増加につながる要因となっています。安井医師は「この3年間、多くの方がインフルエンザウイルスに接することがありませんでした。例年であればインフルエンザが流行すると、インフルエンザを発症しなくても接することで免疫が強化されましたが、この3年間にその機会がなく、多くの方がインフルエンザに対する免疫が弱くなっています。またこの3年の間に生まれたお子さんはインフルエンザウイルスに接することが極めて少なかったので、免疫を作る機会がありませんでした。こうしたことを考えると、これからインフルエンザはさらに大きな流行になることも考えられます」としています。

二次感染にも注意を

安井医師の勤務する病院には、インフルエンザが原因で入院される方もいるそうです。
安井医師「この前も若い方が入院されてきたのですが、この方はインフルエンザで重症になったのではなく、インフルエンザの感染のあと※二次感染の細菌性肺炎の症状が重く入院されました。この方もインフルエンザでからだが弱まっているところへ、他の細菌に感染し、肺炎を起こされたようです。こうした二次感染を防ぐためにも、体調が悪いときは医療機関を受診して、早期に治療することが重要です」としています。
※二次感染とは、ある病原体に感染して抵抗力が弱まっているところへ、別の病原体が体内に侵入して感染すること。

人にうつさないためにも、無理をしないこと

そして早期診断・早期治療は、ほかの人にうつさないためにも重要です。
安井医師は、「昔でしたら多少の発熱でも職場や学校に行くということもありましたが、無理はしないでください。インフルエンザだけでなく、咽頭結膜熱や溶連菌感染症もふえています。体調不良を感じたら、周囲に広げないよう心配りも大切です。『アデノウイルス感染症は、抗ウイルス薬が無いので、病院に行っても意味がない』との話を耳にしますが、医師の診断を受けず、自分で勝手に判断すると、実は、違う病気だと言うケースもあります。体調が悪い場合は早めに医療機関を受診して、どのような病気にかかっていることを知ることが重要です。これはご自身のためでもありますが、無理をしてほかの人にうつさないためにです。今、全国の学校でインフルエンザの集団感染が起きており、職場でも広がっています。感染症の予防につながる行動を日頃から心がけていただきたいと思います」としています。

引用
厚生労働省:「インフルエンザの発生状況について」令和5年第47週(11/13-19)、インフルエンザQ&A

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏