引き続き感染対策を 引き続き感染対策を
厚生労働省が12月1日に発表した令和5年第47週(11/20-26)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、全国の定点当たり報告数は2.33。今年9月に減少に転じて以来、12週間ぶりの増加になりました。減りどまりからの、わずかな増加ではありますが、再び流行の心配はあるのでしょうか。

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感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「新型コロナは昨年末から今年初めにかけて流行のピークがありましたし、昨年の初めにもピークがありました。過去3年間1月を中心に冬場に流行があったので、これから本格化する冬のシーズンに向けて再び流行が起こる可能性は十分にあると思います」としています。

現在流行中の株について

現在流行している新型コロナウイルスの流行株はXBB系統が88.55%。中でもEG.5系統の株(EG.5.1、EG.5.1.1、HK.3など)が主流を占めています。
安井医師「このEG.5系統というのはオミクロン株の中のXBB株が変異したものです。この株は、免疫逃避の能力が高く、以前に新型コロナウイルスに感染していても、再び感染するということがあります。ですので、かつて新型コロナウイルス感染症にかかっていても、再び発症する可能性があるので、感染対策などの注意が必要です。現在令和5年秋開始接種で使用されているXBB.1.5株に対応するワクチンでも効果があると考えられているので、重症化のおそれがある方は、予防のためにワクチン接種を検討されるといいと思います」

令和5年秋開始接種

新型コロナワクチンの令和5年秋開始接種は、来年(令和6年)3月31日まで実施されており、1人1回受けることができます。受けることができる方は、
・生後6か月以上の方
・日本国内で初回接種(1回目・2回目)が完了している方、またはそれに相当する接種が完了している方です。3回目以降の追加接種を受けたかどうかは問いません。
・また、前回の接種から一定期間が経過していること(ワクチンによって3か月以上、あるいは6か月以上の間隔が必要です)
令和5年秋開始接種は原則として、住民票所在地の市町村(住所地)の医療機関や接種会場で接種が受けられます。詳しくはお住まいの市町村にお問い合わせください。なお、WHO(世界保健機関)は新型コロナワクチンの利用に関する指針において、高齢者等に対してはさらなる追加接種を推奨する一方、健康な乳幼児、小児、成人等に対しては推奨せず、健康な乳幼児と小児に対しては初回接種を含め、疾病負荷などを踏まえ各国において検討すべきとしています。日本では重症者を減らす目的で、高齢者など重症化リスクが高い方を接種対象としつつ、その他のすべての方に接種機会を提供するとしています。

新たな変異株の流行は?

一方、XBB系統ではないBA.2系統の変異株「BA2.86」の流行が懸念されています。BA2.86は今年7月にイスラエルとデンマークから報告され、以来アメリカ、イギリス南アフリカなど各国で検出されています。日本でも検出が報告され、第45週(11/6-12)では、6例が報告されるなど、今までに70例以上が報告されています。このBA2.86はスパイクタンパク質に30以上のアミノ酸変異を有し、ワクチンや感染による中和抗体による免疫から逃避する可能性が生じるとされています。安井医師は「今の段階では、BA2.86系統株が現在流行しているXBB系統株に置き換わる状況にはありませんが、WHOでも世界的な流行を注視しています。日本でも検出数が増えており、今後流行の主流になる可能性もあります。これから新型コロナが流行しやすい季節になります。手洗い、部屋の換気など、引き続き感染対策に留意していただければと思います」と語っています。

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について令和5年第47週(11/20-26)、新型コロナワクチンQ&A
国立感染症研究所感染症疫学センター:新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握 令和5年第46週(11/13-19)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏