咽頭結膜熱の症状は、発熱・ノドの痛み・結膜炎 咽頭結膜熱の症状は、発熱・ノドの痛み・結膜炎
国立感染症研究所の第48週(11/27-12/3)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は3.72。現在の方法で集計を始めた1999年以来最多を更新中で、全国で警報レベルの流行となっています。都道府県別では、福井が8.72で最多となっており、北海道8.05、佐賀6.87、福岡6.63、石川6.00と続いています。

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咽頭結膜熱とは?

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39℃の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「咽頭結膜熱は、過去に例を見ないほどの流行となっており、これから先についても予測が大変難しくなっています。咽頭結膜熱は主に学校に入る前の小さなお子さんの間で流行する感染症ですが、この3年間に流行がなかったことから、他の世代でも多くの感染者が出ています。アデノウイルスは予防が難しく、またアデノウイルスに有効なワクチンも薬もないので、手洗いなどの手指衛生や、タオルの共用をしないなど、基本的な感染対策をお願いしたいと思います。流行は、学校などが冬休み期間に入れば、いったん落ち着くと予測しています。しかし、この増え方は、えげつないの一言です」と語っています。

咽頭結膜熱の予防法は?

咽頭結膜熱の予防としては、感染者との密接な接触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒を励行することなどがあります。消毒法に関しては、手指に対しては流水と石けんによる手洗い、及び90%エタノール、器具に対しては煮沸、次亜塩素酸ソーダを用います。消毒用エタノール(80%程度)の消毒効果は弱いとされています。

感染力が強いためにタオルなどの共有は厳禁です。多くの人がさわるドアノブ、スイッチから感染することもあるので、流行時には消毒をする必要があります。保育所などではおもちゃの消毒も有効です。また幼児の感染が多い咽頭結膜熱ですが、治癒後も長時間、便のなかにウイルスが排出されることがわかっています。排便後、またはおむつを取り替えたあとの手洗いは石鹸を用いて流水で丁寧に行うことが重要です。

罹患後の登園の目安は?

かかってしまったあとの登園の目安は「発熱、充血等の主な症状が消失したあと2日を経過していること」となっています。

結膜炎など眼に症状がある場合は、眼科を受診

咽頭結膜熱の主な症状は、発熱、ノドの痛み、結膜炎です。安井医師は、「咽頭結膜熱の症状は、まず発熱があり、続いてノドの痛み、結膜炎を発症するとありますが、どの症状が強く出るのかは人それぞれです。特に眼の症状は小児科や耳鼻咽喉科では診られませんし、アデノウイルスの流行時期には別の血清型のウイルスが原因の『流行性角結膜炎』の場合もあるので、早めに眼科を受診する必要があります」としています。流行性角結膜炎で角膜に炎症が及ぶと透明度が低下し、混濁が数年に及ぶことがあります。また新生児や乳幼児では偽膜性結膜炎を起こし、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こすことがあるので注意する必要があります。異変を感じたり、気になる症状があるときは、迷わず医療機関を受診しましょう。

引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第48週(11/27-12/3)」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」「流行性角結膜炎とは」
厚生労働省:咽頭結膜熱について
こども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版・2023年5月一部改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏