流行地域は注意 流行地域は注意
国立感染症研究所の第48週(11/27-12/3)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は4.17。前週の3.86から、約1.08倍となり、過去最多を更新しています。全国的に患者が発生していますが、エリア別にみると関東地方・九州地方で多くの患者報告数があがっています。また、都道府県別の上位は、鳥取県(10.53)宮崎県(8.14)富山県(7.79)となっています。
主に、お子さんの間で流行することが多いとされる感染症ですが、他の世代でも、発症することがあるようです。今回、『感染症・予防接種ナビ』に寄せられたのは、東京都の36歳の方からの経験談です。

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溶連菌感染症経験談 36歳 東京都

11/25(土)夕方から倦怠感と食欲不振で早めに就寝。深夜から発熱38.5~39.0度を行ったりきたり
11/26(日)解熱剤などは飲まず、とりあえず氷枕と冷えピタを相棒に寝て自然治癒させようと丸一日横になり寝るも依然として39度近辺の発熱のまま。目立つ発汗もなし。この辺りから治癒が見えず絶望感が襲ってくる。夕食にウィダーインゼリーを流し込み、再び眠るも熱が下がらず。
11/27(月)深夜1時、観念し市販の総合感冒薬を服用してみる。
あっさり熱が下がりやっとまともに睡眠でき、朝には解熱。代わりに喉のひどい痛みが現れる。夕方耳鼻科を受診し、溶連菌の診断。抗生剤とトラネキサムなど処方され服薬。
熱はぶり返すことなく倦怠感もなし、喉は徐々に快方に向かっているような、現在そんな服薬3日目です。とにかく熱がひどく、高熱の辛さを知りました。

感染症の専門医は…

感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「溶連菌感染症は、今後も、増加していく可能性がじゅうぶんにあります。ここ3年間ほどは、大きな流行がなかったため、感受性者が増えていることも要因の一つと考えられます。主に、小学校低学年世代が流行の中心となる感染症ですが、ここまで大きな流行となれば、他の世代に広がりをみせてもおかしくないでしょう。子どもから、家庭に持ち込まれるケースがあると考えられますので、注意が必要です。今回のケースですが、直接、診断した訳ではないので、不明な点もあります。しかし、耳鼻科には検査キットもあることから、早めに診断できたのは、幸いでした。溶連菌感染症で、最も大切なのは、抗菌薬を服用することです。症状が緩和したと感じても、必ず処方された薬を飲み切ってください。服用期間が短いと、ぶり返すことがあり、きっちり治すことが肝要です。溶連菌感染症は、糸球体腎炎など、合併症が何より厄介です。服用3日目の経験談で、その後、処方された薬を飲み切られたかが気がかりです」としています。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。

溶連菌感染症の症状は?

主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。

予防法・治療法は?

溶連菌感染症の予防としては、患者との濃厚接触をさけることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も有効です。治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。安井医師は「溶連菌感染症は様々な合併症を併発する可能性があるので、早期治療が重要です。発熱やノドの痛みなど、初期に起こる症状がある場合は、早めに医療機関を受診していただければと思います。溶連菌感染症は抗菌薬で治りますが、治療が遅れると、それだけ症状が長引くおそれがあります。症状の改善、そして合併症の予防という点においても、早期治療が重要です」としています。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ第48週、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏