BA.2.86系統株が急増中! BA.2.86系統株が急増中!
厚生労働省が12月15日に発表した令和5年第49週(12/4-10)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、全国の定点当たり報告数は3.52。これで3週連続の増加になりました。全都道府県で報告数は増加しており、再び感染拡大が懸念されています。

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感染症に詳しい医師は・・・

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐兼感染管理室室長の安井良則医師は「過去3年間においても、新型コロナウイルス感染症は冬場に流行しているので、この冬も感染拡大の可能性はあると考えています。現在インフルエンザの流行も拡大しているので、同時に流行していくのか、それともどちらかが感染者を増やしていくのか、予測が難しいところです。新型コロナもインフルエンザも、気温の低下や空気の乾燥などの環境で感染が拡大するので、これからも感染対策に留意していただきたいです」と語っています。

過去にあまり流行していない地域は要注意

また安井医師は「過去にあまり新型コロナが流行しなかった地域は、感受性者(免疫が不十分など、病原体に感染しやすい状態にある人)が多く、感染が拡大しやすい状況にあると言えます。これから年末年始に向けて旅行や帰省などで人の動きが活発になりますが、かつてあまり新型コロナが流行していなかった地域は、特に注意が必要です」としています。

新たな派生株BA2.86系統が、流行の中心に?

国立感染症研究所感染症疫学センターが発表した「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報」によると、現在流行の中心はオミクロン株のXBB系統で、民間検査機関からの検体に基づく検査によると第47週では約85%がXBB系統(HK.3、JG.3、GK.1.1ほか)です。一方これから感染者が増えていくのでないかとされているのが同じオミクロン株のBA2系統で、現在も約13%がBA.2系統(BA.2.86.1、JN.1、JN1.1など)です。安井医師は「このBA.2系統というのは、2022年に世界的に主流を占めていましたが、その派生株であるBA.2.86系統株が今年の夏以降日本を含めた世界各国で検出されるようになってきました。BA.2.86系統は、スパイクタンパク質に従来のBA.2系統とは30か所以上、現在の主流であるXBB系統とは35か所以上のアミノ酸配列の変異を有しており、抗原性が大きく異なっています。それにより、ワクチンやすでに感染したことによって得られた免疫を逃避する能力に優れている可能性が高いことが指摘されています。BA.2.86系統は、1月中には50%を超えるとの予測もあります。新型コロナが流行しやすい気候に加え、新型株の感染拡大が、大きな流行の要因になるのではないかと危惧しています」としています。国立感染症研究所感染症疫学センターの「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報」でも、BA.2.86系統株はこれから先も増加を続け、51週(12/18-24)には約24%に達すると推定しています。

令和5年秋開始接種

新型コロナワクチンの令和5年秋開始接種は、来年(令和6年)3月31日まで実施されており、1人1回自己負担なしで受けることができます。使用されるワクチンはオミクロン株XBB.1.5に対応した1価ワクチンですが、BA.2.86系統株には効果があるのでしょうか。安井医師は、「現在接種が進められているXBB.1.5対応1価ワクチンは、BA.2.86系統株に対しても中和抗体が上がり、効果があるとされています。新型コロナワクチンは、100%発症を防止できるわけではありませんが、発症の予防、そして重症化を防ぐ効果が期待できます。ワクチンを接種してから免疫がつくまでに1〜2週間程度かかります。特に重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある方は、早めに接種するといいと思います」としています。

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について令和5年第49週(12/4-10)、新型コロナワクチンQ&A
国立感染症研究所感染症疫学センター:新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握 令和5年第48週(11/27-12/3)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏