年始も感染症の予防を! 年始も感染症の予防を!
厚生労働省が2023年12月22日に発表した第50週(12/11-17)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、全国の定点当たり報告数は4.15。これで4週連続の増加になりました。都道府県別では山梨9.63、北海道9.31、長野8.49、愛知6.09、岐阜5.97、愛媛5.69香川5.51、富山5.42、茨城5.41、新潟5.40、山口5.16が多くなっています。

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新たな派生株JN.1が、流行の中心に?

また、国立感染症研究所感染症疫学センターが発表した「新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報」によると、現在流行の主流となっている派生株はオミクロン株XBB系統(HK.3、JG.3、GK.1.1ほか)の約76%ですが、同じオミクロン株のBA.2系統(BA.2.86.1、JN.1、JN1.1など)が約22%と急激に増えています。その中でもJN.1は11%を超えています。2023年末となる52週にはBA.2系統が30%を超えると推定されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「BA.2.86系統は、スパイクタンパク質に従来のBA.2系統とは30か所以上、現在の主流であるXBB系統とは35か所以上のアミノ酸配列の変異を有しており、抗原性が大きく異なっています。それにより、ワクチンやすでに感染したことによって得られた免疫を逃避する能力に優れている可能性が高いことが指摘されています。新たな株に置き換わることで、来年には再びまとまった流行となる可能性もあると考えています」としています。

新型コロナウイルス感染症とは?

新型コロナウイルスは鼻やノドなどの上気道に感染すると考えられています。2〜7日の潜伏期間のあと、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、咳といった上気道症状に加え、倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛といった全身症状が生じることが多く、その症状はインフルエンザとよく似ています。オミクロン株が主流となった現在は、嗅覚・味覚障害の症状は減少しています。軽症の場合は1週間以内に症状が軽快することが多い一方、発症から3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかない場合には、罹患後症状(後遺症)の可能性を考える必要があります。また、重症化リスクが高い患者の一部では感染は下気道まで進展し(中等症に相当)、さらに急性呼吸逼迫症候群、多臓器不全(重症に相当)に至る患者もいます。

感染経路は?

感染者の口や鼻から、咳・くしゃみ・会話のときに排出されるウイルスを含む飛沫またはエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。

他の人にうつすリスクはどのくらい?

新型コロナウイルス感染症では、個人差はありますが発症2日前から発症後7〜10日間は感染性のウイルスを排出していると言われています。発症後3日間は感染性ウイルスの平均的な排出量が非常に多く、発症後5日間は他人に感染させるリスクが高いとされています。また、排出されるウイルス量は発熱や咳などの症状が軽快するとともに減少しますが、症状軽快後も一定期間ウイルスを排出するといわれています。

年末年始は、感染拡大に注意

安井医師は「学校が冬休みに入り、子どもたちの間での感染の機会は減少しますが、多くの方が年末年始の休暇を迎えている時期は、感染の機会が増えていくと考えられます。特に高齢の方や基礎疾患をお持ちの方は重症化リスクが高いので、手洗いの徹底や部屋の換気、そして場合によってはマスクを着用して、感染防止を心がけていただきたいと思います」と語っています。

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について令和5年第50週(12/11-17)、新型コロナワクチンQ&A、新型コロナウイルス感染症診療の手引(第10.0版)
国立感染症研究所感染症疫学センター:新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握 令和5年第49週(12/4-10)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏