【感染症ニュース】出産直後に40℃発熱の女性から溶連菌検出 医師「産道の傷から感染の可能性」高レベル流行の溶連菌感染症に注意
2024年2月28日更新
 引き続き感染対策に留意を!
引き続き感染対策に留意を!
国立感染症研究所の令和6年第7週(2/12-18)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は3.68。今年に入り増加傾向にありましたが、6週ぶりに減少に転じました。とはいえ、依然として例年よりも高い水準の流行が続いており、鳥取8.58、山形7.61、北海道7.54、福岡7.16、高知6.46、愛媛6.08が多くなっています。

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。

出産した女性が、溶連菌に感染

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、先日このような症例があったと話しています。「先日、出産された方が、翌日から、40℃以上の高熱を出されて、一時危ない状況に陥りました。調べてみると溶連菌が検出されました。出産の時に赤ちゃんが産道を通った際にできた傷から感染し、血流感染で全身に菌が回った可能性があります。幸い入院中だったため、抗菌薬の適切な投与で、事なきを得ました。しかし、投与が遅れていたら、非常に危険な状態になったと考えられます。溶連菌は、珍しいものではありませんが、溶連菌感染症の報告数が高いレベルであることから、世の中に蔓延していると考えられます。今回は、産科の医師と連携しながら対処できましたが、私自身も初めての症例でした。全国でも、この様な症例が出ている可能性があります。医療関係者の方の参考になればと思っています」としています。

B群レンサ菌

レンサ球菌には様々な種類があり、B群レンサ球菌は、新生児の菌血症、髄膜炎、及び成人の敗血症、肺炎の原因になるとされています。常在菌の一つで、妊婦さんの産道に存在することがあり、通常は問題ありませんが、出産時に赤ちゃんにうつり、新生児侵襲性感染症(出産時に負う小さなキズなどから細菌などに感染)の起因菌になるとされています。

安井医師は、「レンサ球菌は、私たちの身の回りにありふれた細菌ですが、血流に入ると重篤な症状を起こすことがあります。治療は抗菌薬で行うのですが、処置が遅れた場合、命に関わるようなこともあるので、注意が必要です」としています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

レンサ球菌が引き起こす感染症には、「人食いバクテリア」という病名で取り上げられる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」があります。主に溶連菌感染症と同じA群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病する例があります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血液低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。

近年では、妊産婦の症例も報告されているということです。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子どもから大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いのが特徴です。

溶連菌感染症の流行が、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加につながる

安井医師は、「溶連菌感染症が流行すると、レンサ球菌に接する機会が増え、命を脅かすことのある劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者が増えると考えられます。減少傾向に転じたという溶連菌感染症ですが、依然として高いレベルで流行が続いていますので、引き続き感染対策に留意していただければと思います」と話しています。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第7週(2/12-18)、溶血性連鎖球菌感染症2012年〜2015年6月、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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