様々な感染症に注意 様々な感染症に注意
2024年2月に注意してほしい感染症について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【2月に注意してほしい感染症!】新型コロナ増加に勢い新たな流行株JN.1への置き換わり一因か… インフルエンザ動向に注意

【No.1】新型コロナウイルス感染症

1月末時点で、新型コロナ患者数は堅調に増加しています。2024年第3週(1/15-21)時点で、9週連続の増加。寒さ厳しく、空気も乾燥しているため、患者発生数の増加は今後も継続していくものと予測しています。国内で主流となっている、EG.5とその派生株からなるXBB系統は、BA.2系統の派生株であるBA.2.86系統へ置き換わりが進んでいます。BA.2.86系統は、スパイクタンパク質に従来のBA.2系統とは30箇所以上、現在主流であるXBB系統とは35箇所以上のアミノ酸配列の変異を有しており、抗原性が大きく異なることより、ワクチンや既感染からの免疫逃避に優れている可能性が高いことが指摘されています。最近になって、米国CDCではBA.2.86からの派生株であるJN.1が国内で増加しつつあることをHP上で報告しており、日本国内においても、BA.2.86系統の増加が見られつつあります。今後、国内でも、このBA2.86系統への置き換わりが進むことが予測されており、2024年2月以降もBA.2.86系統の発生動向には注意していく必要があると考えています。

【No.2】インフルエンザ

インフルエンザは、2024年第3週(1/15-21)は、前週に比べ増加に転じています。しかし、第1週と第2週は、年始の休暇や祝日の関係で、実診療日数が少ないため、第3週以降で、どのような動きを見せるのか注視が必要です。これまでの流行状況について、多少の増減はあるものの、国内のインフルエンザの患者発生数は、2023年9月以降現在に至るまで増加傾向が続いており、引き続き注意が必要と考えています。過去の例をみると、前年の12月までに、それほど流行していなかった地域が、年明けに患者発生数が急増する場合が多いです。インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられています。日本でのインフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え3月頃まで続きます。しかし、今季はシーズン入り前から、一定程度の患者報告数があり、例年の同時期に比べると高い水準でのシーズン入りとなりました。一方で、地域差や増加の幅など流行の動向がつかみにくいため、注意が必要です。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染で、他に接触感染もあるといわれています。飛沫感染対策として、咳エチケットや接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト-ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。引き続き、注意が必要でしょう。

【No.3】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、学校・幼稚園・保育園などでの流行が多くみられます。幼稚園・保育園・小学校など集団生活の場で、流行することなどから、一定程度、増えることは予測していましたが、余りにも急激に増加しているので、注意が必要です。今後、過去最高レベルの流行となる可能性もあります。特に、小学校低学年のお子さんや幼稚園・保育園のお子さんは、注意が必要でしょう。溶連菌感染症は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。冬期休暇期間に、いったん流行が落ち着くと予測していますが、年明けに学校が始まった後に、どのように患者数が推移するか見極めが必要です。

【No.4】咽頭結膜熱

咽頭結膜熱の患者報告数は、12月に、過去最高の流行をみせました。感染症の動向を、長年に渡り調査・分析していますが、このような動きは、今までありませんでした。咽頭結膜熱は、アデノウイルスを原因とする感染症です。症状は風邪とよく似ていますが、発熱、咽頭痛、結膜炎です。発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。最近では、アデノウイルスの検査キットが普及したことも手伝い、発熱・咽頭痛・結膜炎の3つの症状が一度に出ない場合は、咽頭結膜熱ではなく、「アデノウイルス感染症」と診断されることもあります。感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。

感染症に詳しい医師は…

大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「2月の流行で、最も気がかりなのは、新型コロナウイルス感染症です。患者数は、堅調に増加しています。新たな変異株へ、ちょうど置き換わってきている時期だと推測されます。流行は、これから、本格化することが予測されます。一方で、いつ、どのくらいまで流行が広がるかは、予測できません。BA.2.86系統の変異株が、どこまで免疫を逃避するか分からないことも理由の一つです。現在、当院で、新型コロナと診断される方は、一日辺り4-5人ほどです。入院が必要なケースは、そのうち1人くらいの割合です。入院される方は、80-90代が中心ですが、60-70代もいらっしゃいます。感染対策として、室内の換気を推奨したいのですが、季節的な問題もあります。各自で、気をつけるしかないです。現在、新型コロナと診断された方の主な症状は、咽頭痛・発熱・倦怠感・頭痛などですが、中には、発熱の症状が現れない方もいらっしゃいます。症状が当てはまらないケースであっても感染していないとは言い切れません。体調不良を感じた場合は、医療機関を受診することを勧めます」としています。

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏