報告数はゆるやかに増加中! 報告数はゆるやかに増加中!
国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年8週(2/19〜25)によると、全国のRSウイルス感染症の患者の定点あたり報告数は0.21。報告数はまだ少ないものの、今年に入り7週連続で増加しています。RSウイルス感染症は、乳幼児…。特に生後1か月未満の子どもが感染すると突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあるなど、注意が必要な感染症です。また、60歳以上の方を対象にした任意接種のワクチンが、2023年に承認されています。高齢者の方にも、知っておいて頂きたい感染症の一つです。

【2024年】3月に注意してほしい感染症!インフルエンザ・新型コロナ共にピークアウトの兆候も…要注意はRSウイルス感染症

RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染するとされています。症状としては、発熱や鼻汁などの軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。初回の感染時にはより重症化しやすいといわれており、特に生後6か月以内にRSウイルスに感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。

RSウイルスの感染経路は?

RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染する接触感染。あるいはRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散る飛沫を浴びて吸い込むことによる飛沫感染で広がります。

RSウイルス感染症の症状は?

通常はRSウイルスに感染してから2〜8日、典型的には4〜6日間の潜伏期間を経て発熱、鼻汁などの症状が数日続きます。多くは軽症で自然軽快しますが、重くなる場合にはその後咳がひどくなる、喘鳴(ゼイゼイする)がでる、呼吸困難となるなどの症状が出現し、場合によっては細気管支炎、肺炎へと進展していきます。

乳幼児の感染には要注意!

RSは生涯にわたって感染を繰り返し、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。また、成人では通常は感冒用症状のみです。初感染の乳幼児においても約7割は鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに警戒しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現します。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

基礎疾患を有する高齢者も注意が必要

また、特に慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者において急性肺炎を起こす原因になることが知られていて、特に長期療養施設内での集団感染が問題になる場合があります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「RSウイルス感染症は、以前は夏から増加傾向となり秋にピークがみられていましたが、新型コロナが流行した2021年以降は流行が早まっており、春から増加が始まり夏にピークが見られます。RSウイルスは、子どもが多くかかる感染症ですので、ゆっくりと流行が広がっていきます。2023年も今頃から徐々に増加し始めましたので、今年も夏に向けて流行が広がっていきそうな気配がしています。大阪府では、翌第9週の報告数が、すでに1.0を超えており、増加の勢いが強いです。現在の大阪府での局地的な流行は、近く、近畿圏に広がると考えられ、その後、ゆっくりと、全国に広がると予測しています。流行の拡大について、注視しています」と語っています。

RSウイルス感染症の治療、予防は?

RSウイルス感染症には特効薬はなく、感染した場合、治療は基本的には症状を和らげる治療=対症療法を行います。ワクチンについては、2023年に60歳以上を対象にしたものが承認されましたが、任意接種で費用がかかることもあり、まだ一般的ではありません。予防については、咳などの呼吸器症状がある場合は、飛沫感染対策としてマスクを着用して0歳児、1歳に接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系消毒剤などで消毒し、流水・石鹸による手洗いか、アルコール製剤による手指衛生が重要です。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年8週(2/19〜25)、
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏