風邪気味の時は乳幼児と距離を置く! 風邪気味の時は乳幼児と距離を置く!
国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年第9週(2/26〜3/3)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は0.29。報告数はまだ少ないものの、今年に入り8週連続で増加しています。RSウイルス感染症は、乳幼児・・・特に生後1か月未満の子どもが感染すると突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあるなど、注意が必要な感染症です。

【2024年】3月に注意してほしい感染症!インフルエンザ・新型コロナ共にピークアウトの兆候も…要注意はRSウイルス感染症

RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染するとされています。症状としては、発熱や鼻汁などの軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。初回の感染時にはより重症化しやすいといわれており、特に生後6か月以内にRSウイルスに感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。

乳幼児の感染には要注意!

RSは生涯にわたって感染を繰り返しますが、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。また、成人では通常は感冒用症状のみです。初感染の乳幼児においても約7割は鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに警戒しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現します。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

大阪が突出して報告数が多い!

第9週の都道府県別の定点当たり報告数は、大阪1.02、北海道0.76、栃木0.67、福島0.61で多くなっています。特に大阪は突出して多く、前週から約1.5倍に増加。地域別に見ると大阪市北部では2.00となっています。大阪では、患者のうち1歳未満が34%となっており、重症化が心配されます。
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「現在、大阪府で流行が拡大しつつありますが、これから近畿地方など周りの地域に徐々に流行が広がっていくものと予測しています。2022年、2023年は7月ごろがピークとなりましたが、RSウイルスは急激に流行が広がるということはないので、今年もこれから数か月にわたり地域を広げながら、流行が続いていくのではないかと懸念しています」と語っています。

RSウイルスの感染経路は?

RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染する接触感染。あるいはRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散る飛沫を浴びて吸い込むことによる飛沫感染で広がります。

大人やきょうだいからの感染を防ぐ!

また、RSウイルスに何度も感染している成人や年長児は、感染しても風邪や気管支炎など軽い症状、あるいは無症状の場合があり、知らず知らずに乳幼児にうつしてしまう可能性があります。大人やきょうだいに風邪のような症状がある場合には、なるべく乳幼児に近づかないようにすることが、感染予防につながります。そして乳幼児がもし苦しそうに呼吸していたり、食事や水分摂取ができない時には、すぐに医療機関を受診してください。

経験談をぜひお寄せください!

安井医師は、「以前、RSウイルス感染症は高熱は伴わないと言われていたのですが、最近は高熱が出たという報告もあり、症状が変化しているのかもしれません。これから全国的に流行が広がっていく可能性があります。お子さんがRSウイルス感染症にかかったら、症状や経過などの経験談をお寄せいただき、情報を共有させていただければと思います。それにより重症化するお子さんが一人でも少なくなればいいと思います」と語っています。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年9週(2/26〜3/3)、
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)、
大阪府感染症発生動向調査週報(速報)2024年9週(2/26〜3/3)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏