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東日本への拡大懸念 東日本への拡大懸念
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年23週(6/5〜11)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたり報告数は2.64。前週からは0.5ポイント増で、5週連続の増加となっています。都道府県別では、山口7.16を筆頭に、岐阜、兵庫、奈良、和歌山、広島、愛媛、福岡、大分、宮崎、鹿児島で3を超えています。

 これまで流行の中心は西日本でしたが、埼玉県2.53、千葉県では2.64となっており、東日本でも流行の兆しがあります。

 今回は、埼玉県から寄せられたRSウイルス感染症の経験談をご紹介します。

埼玉県・2歳

1日目 6/9
保育園から帰宅しご飯とお風呂をすませ就寝。夜にいきなり発熱。38.7。風邪の症状もなし。

2日目 6/10
朝は平熱に戻ったが、病院に行き薬をもらう。昼過ぎにまた発熱。38度越え。少し目やにが出てくる。カロナールを飲ませて、少し下がった時に食事を少しだけ。便も普通に出た。夜中にまた高熱で39度越え。

3日目 6/11
朝はまた下がったが大量の目やにで目が開かず。少しテレビを見て、昼過ぎにはまた39度越え。便も普通に出たが、カロナールを飲んでも効果なし。この時くらいに、咳と鼻水が出てくる。夜も変わらず39度越え、薬も嫌がって飲まず。

4日目 6/12
病院をまた受診。同じ薬をもらって5日以上熱が続いたらまた来るように言われ、胸の音や喉も異常無し。昼過ぎに少し下がり、少し食事が出来て便も出る。夜は変わらず、目やにと咳と鼻水で39度越え。

5日目 6/13
朝から38度越えでぐったり。起きようともせず、熱が40.5まで上がる。薬も水分もとってくれず救急車まで考えたが相談センターに電話。呼吸の仕方など異常ないか確認して、大丈夫だったので様子見。夕方いつもの病院にいき、検査したところRSウイルスだと。特に保育園で流行っているとも聞いてなかった為、どこからかよく分かりませんが。飲み薬ではなく、座薬をもらい帰宅。長くて1週間はもしかすると続くから、10日高熱が続いたら合併症の可能性があるからまた来てとのことでした。この頃から咳がひどく、夜は寝てもすぐ咳こんで中々寝られず熱は39度。食事はとれず、水分のみ。

6日目 6/14
今にいたりますが、目やには改善され熱も38度前後。咳だけひどい状態が続いています。


感染症の専門医は…

 感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「高熱や咳が出て、保護者の方も、お子さんの体調が気がかりだったと思います。症状が出たのが、金曜日の夜で、土日はかかりつけ医が開いていなかったのだと思われます。かかりつけ医の方が、お子さんの健康状態などを理解していることもあり、保護者の方と相談し、悪化した時を想定しながら診察を進められるメリットがあります。RSウイルス感染症は、治療薬がないため、重篤化しやすく、突然、低酸素状態になることもあります。かかりつけ医で検査を済ませずに、大きな病院に搬送ということになれば、大部屋で入院している方に感染を広げてしまう可能性もあります。RSウイルス感染症に関しては、検査の保険適用年齢が1歳未満なので、検査をためらう方もいらっしゃるかも知れません。しかし、「RS陽性」と知っていれば、病院側も、「隔離」などの対応をとることもできますし、人工呼吸器が必要な場合に備えることもできます。RSウイルス感染症は、午前中に軽いかぜ程度の症状だったお子さんが、夕方には呼吸困難で入院といったケースもあります。医師によっては、午前中に診察をして、また夕方に診察するなど、慎重に症状の経過を見守る先生もいます。ただの風邪だと思わずに、お子さんの様子を見て、いつもと違う様子がみられたら、まず検査をお願いします」としています。

RSウイルス感染症には、特効薬もワクチンもない

 RSウイルス感染症には特効薬はなく、感染した場合、治療は基本的には症状を和らげる治療=対症療法を行います。またワクチンはなく、飛沫感染と接触感染に対する予防が有効です。咳などの呼吸器症状がある場合は、飛沫感染対策としてマスクを着用して0歳児、1歳に接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系消毒剤などで消毒し、流水・石鹸による手洗いか、アルコール製剤による手指衛生が重要です。

まわりの人がうつさないように気をつけることが重要

 重症化しやすい乳児や基礎疾患のある子どもにRSウイルスをうつすのは、まわりの大人やきょうだいです。RSウイルスは生涯に何度も感染しますが、大人にとってはただの風邪か、無症状の場合もあります。特にRSウイルス感染症が流行している地域では、自分が感染している可能性もあると思って、乳幼児に接してください。


取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏